異世界の守り人

□異世界の住人
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「なるほどのぉ……そんなことが……」
 トロデは納得したように何度も頷いた。彼の後ろでは、ミーティアがしきりにある一点を眺めている。
 トロデーン城の外に位置する森。日はとっくに落ち、辺りは夜闇に包まれている。
 エイトは目の前のトロデをじっと見つめた。
 緑の肌にとんがった耳、人とはかけ離れた容姿。
 一体誰が、この姿の彼をトロデーンの王と認識できるだろう。
 ついでミーティアを見る。
 白い毛並みに優しげな目、誰もが見とれるであろう美しい馬だ。
 一体誰が、この姿の彼女をトロデーンの姫君だと認識できるだろう。
 別に、彼らはもともとその姿だったわけではない。
 城をいばらで包み、人々をも巻き込む呪いをかけた道化師のせいで、人の姿を失った結果である。
 まだ、他の者達のようにいばらになって深い眠りにつくよりかはましなのだろう。それでも、彼らのこれからを思うとエイトは心中穏やかではない。
 だからこそ、こうして城を出たのだが――そこで問題が転がってきた。
 転がってきたというか、やってきたというか。
「要約すると、この娘はおぬしを助けた後、突然倒れたということじゃな?」
「はい……」
 エイトとトロデはミーティアが見ている方に目をやる。
 そこには、一人の女性が横たわっていた。
 蒼い髪に凛とした美貌をたたえた顔、閉じられたまぶたの下の瞳は、確か紅かったはずだ。
 青い服の上から布をかけ、青い帽子は顔の横に。僅かに聞こえる吐息は穏やかである。
 どこかを怪我した様子も無い。なので倒れた理由は皆目見当が付かないが、彼女はこうして、今もなお気を失っていた。
 トロデはおそらく魔力の使い過ぎではないかと言っていたが、エイトは腑に落ちない。
 そもそも彼女、一体どこから……
「うっ……」
 と。青衣の女性が呻き声を上げた。
 ゆっくりとまぶたを開け、二、三度まばたきをする。それだけで完全に覚醒したようだった。
 がばりと上体を起こし、更には膝立ちになる。先程までたぬき寝入りをしていたのではないかというような俊敏な動きだった。
「おまえ……そうか、無事だったか」
 女性はエイトの姿を見付け、安堵したように息をついた。
 そしてトロデの姿を確認し、首を傾げる。
「誰だ、その緑の人は。おまえの友達か?」
「……え?」
 エイトとトロデは固まる。どう見ても魔物のトロデを友達かと訊くなんて、並の胆力ではない。
 エイトは早々にそれを悟ったのだった。




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