異世界の守り人

□異世界の住人
4ページ/4ページ




 ドルマゲスを倒し、呪いを解く。そのために、まずは敵を知ることから始めねばなるまい。
 だから、まずは彼をよく知る人物に会うことになった。
「マスター・ライラスだったか? ドルマゲスの師というのは?」
 アリィシアが尋ねると、エイトはこくりと頷いた。
「トラペッタに住んでるんだって。その人からドルマゲスは魔法を学んだらしい。本人が言ってたらしいから、間違い無いよ」
「何で魔法使いから道化師になったのか、皆目見当が付かないな……」
 馬車の横を歩きながら、アリィシアはため息をつく。
 アリィシアからすれば、熟練した魔法使いが慣れない旅芸人になったような滑稽さを感じるのだ。
 もっとも、アリィシアも旅芸人(不本意な位置付け)から戦士、そして魔法戦士となったのだから、あまり変わらないかもしれないが。
「杖のことは、そのマスター・ライラスから訊いたのでしょうか、トロデ王」
 アリィシアに質問され、トロデは鷹揚に頷く。
「おそらくの。彼は高名な魔導師じゃ。知っていてもおかしくない」
 杖。それは、ドルマゲスがトロデーン城から盗んだ物だった。
 封印され、決して誰も触れてはならぬとされた代物らしい。由来は長い時の流れにより忘れられたが、大きな災いを呼ぶ物としてトロデーン王家が守ってきたのだという。
 しかし、外部から見ればそれは至高の宝だと思われていたのだろう。実際噂を聞きつけた商人達が今まで何人も来ていたようだし、ドルマゲスもその一人だったに違いない。
 そして――災いの杖は、解き放たれてしまった。
 結果があのトロデーン城である。
「気に入らない。全くもって気に入らない。力を欲した人間は、大概自滅するか理性を失うものだ」
 アリィシアは呟く。少なくとも、今まで戦ってきた奴らはそうだった。
「アリィシア、もしかしなくても怒ってる?」
 恐る恐る、といったていでエイトが尋ねる。アリィシアは苦笑を浮かべた。
「そりゃな。エイトも、同じ気持ちだろう?」
 言えば、エイトはこくりと頷いた。
「絶対倒そうね」
「あぁ。勿論だ」
 エイトの真剣な声に、アリィシアは顎を引く。そして腕をぶつけ合った。
 もう得られないと思った、仲間の証として。



続く…
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ