異世界の守り人

□道すがらの山賊
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 奇妙な一行だとヤンガスは思った。美しい白馬が引く馬車には緑の肌の魔物が乗り、従者のように歩く男女はいやに対照的だ。
 男の方は細身で、どちらかと言えば中性的な顔立ちである。赤いバンダナを頭に巻き、青いシャツと黄色い長めのベストをベルトで留めていた。
 女の方ははっとするほどの美人で、上等そうな青い服と帽子を着用している。射抜くような鋭い目は、ルビーのような紅の瞳だ。
 双方、戦う人間だというのは見て取れる。というのも、二人共剣を帯びているのだ。背か腰かの違いはあるが。
 ヤンガスの制止に止まった一行は、じっとこちらを見つめている。特に男女の方は、剣を抜きさえしないものの、いつでも動けるように身構えていた。
 そんな彼らに、ヤンガスは言う。
「ここを通りたければ、この大山賊ヤンガス様に金目の物をよこしな!」
「やはり山賊か……」
 女の方がやれやれとばかりに首を振った。
「力ずくで行くか。エイト、どっちが行く?」
「僕が行くよ。昨日はアリィシアに戦ってもらっちゃったし」
 どうやら男はエイト、女はアリィシアと言うらしい。エイトはすっと前に出た。
「行け、エイト! 成敗してやれい!」
 緑の魔物は馬車の上でぴょんぴょん飛び跳ねた。エイトは苦笑を浮かべる。
 だがこちらに向き直った時、その顔はすっと引き締まっていた。
 ヤンガスはそれに一瞬気圧されるも、すぐさま行動に出る。
「うおぉ!」
 おたけびを上げて橋を蹴る。斧を振り上げ、眼下のエイトに振り下ろした。
 だが、エイトは少し後ろに下がるだけでそれを回避してしまう。
「い、いいぃ!?」
 予想外な展開に、ヤンガスは目を見開いた。エイトの実力を見誤っていたと言える。
「エイト! 今の内に橋を渡りきるぞ!!」
 アリィシアの声に、ヤンガスはさせまいと橋に突き刺さった斧を持ち上げようとした。
 だが、持ち上がらない。どうやら刃が橋の木板に完全にはまってしまったようである。
 まさかあの女、それを見抜いたのか?
 アリィシアを見ると、ほんの僅かに唇を緩めていた。ヤンガスの予想は間違っていないようである。
 そうこうしている内に、エイトもアリィシアも馬車も脇を通り過ぎてしまった。ヤンガスはせめて斧は抜こうと力任せに引っ張る。
 それがよくなかった。




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