異世界の守り人

□トラペッタ
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 エイト達がその場に来た時には、トロデは街の住民から石を投げつけられていた。
 トロデの現在の姿は魔物そのもので、ゆえに住民の反応はしかたがないものなのだが、エイトは主君が虐げられている姿にかっとなる。
「どいて!」
 エイトは住民を押しのけ、トロデの元に駆け寄った。
「陛下、ご無事で!?」
「お、おぉ……エイト。早うこの街から出るぞ」
 トロデはエイトの姿にほっとしたようで、早々に馬車に乗り込んだ。
「エイト、こっちだ!」
 アリィシアが人ごみを無理矢理かき分け、馬車の通る道を確保していた。ヤンガスはその隣で周りに睨みをきかしている。
 エイトは馬車を引っ張ると、足早にその場を後にした。


「全く……酷い目に合ったわい」
 トロデはやれやれとばかりに首を振った。
「人を見かけで判断しおって。人の真価は見ただけで解るものではないぞ!」
「その通りでがす!」
 ヤンガスが力強く同意した。昔見た目のせいで酷い目に会ったのかもしれない。
「はぁ……それより、エイトよ。マスター・ライラスは見付かったのか?」
 一番訊かれたくなかった質問に、エイトは言葉に詰まる。アリィシアがこちらを見て心配そうな顔をしたが、エイトは彼女に笑みを返して口を開いた。
 トロデに向かい合った時は、表情を消して。
「マスター・ライラスは、先日の火事ですでにお亡くなりになっていました。おそらく、ドルマゲスに殺されたのかと」
「何じゃと!?」
 トロデは目を見開き、呻いた。
「ドルマゲスめ……我が城を呪うだけでは飽きたらず、己が師の命まで……! 許せんっ。どちらにせよこの街には長居は無用じゃ。先を急ぐとしよう!」
「! 待ってください、王」
「……うん? どうした、アリィシアよ」
 何かに気付いたらしいアリィシアが意気込むトロデを呼び止める。アリィシアは後ろを振り返った。
「彼女、私達に何か用があるようですよ」
 エイト達は後方を見やる。
 トラペッタの街に入るための扉。その前には、一人の少女が立っていた。



続く…
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