異世界の守り人

□疑問
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「奇妙なことになってきたなぁ」
 宿屋の一室で、アリィシアは天井を仰いだ。


 さぁ出発しようとしたところでアリィシア達の前に現れた少女は、ユリマと名乗った。
 ユリマは酒場で出会ったルイネロの娘で、彼女の家に訪れるためにアリィシア達はトラペッタに入った。
 トロデは外でミーティアと共に待機。また入っては同じことを繰り返しかねない。
 そして彼女の家に訪れた時に聞かされたのは、父ルイネロの不調だった。
 彼は占い師だという。地元では外れることは無いと言わしめるほど高名な占い師だったが、ある日突然占いが当たらなくなったらしい。
 ユリマは水晶玉が力を失ったのが原因ではないかと言っていた。確かに彼女の家にあった水晶玉は、素人目から見てもただのガラス玉にしか見えない。あれでは例え力のある占い師でも当たる占いなどできないだろう。
 そんな時、彼女は夢を見たのだという。ただの夢ではない。予知夢だ。いや、内容を考えると予言と言った方がいいかもしれない。
 彼女の夢によれば、人でも魔物でもない者が自分の願いを叶えてくれると言われたらしい。
 人でも魔物でもない、という言葉に、アリィシアは一瞬驚いた。エイト達は現在のトロデだと思ったらしいが、トロデは正確には姿はともかくまごうこと無く人間である。彼を指すならば、ユリマの夢は正鵠を射ていない。
 ならば、元天使である自分を指しているのだろう。自分は姿はともかく、人間ではないのだから。
 ただ、腑に落ちないところがあるが。
 その夢には続きがあって、トラペッタから少し離れた場所に位置する滝の洞窟の奥で水晶玉があるのだという。それが本当なら、ルイネロは本来の力を取り戻すだろう。
 うまくいけば、ドルマゲスの居所を占ってもらえるかもしれない。
 だから協力することになったのだが、トロデの反応は少し意外だった。
 難色を示すと思ってたのに、ミーティアと同い年だというわけの解らない理由で快諾したのだからとんだ子煩悩だ。いや、ルイネロを思うユリマの姿勢に感動したと言うのもあるだろうが。
 しかし今日はもう遅いので、明日改めて向かおうという話になり、現在に至る。
「明日滝の洞窟に行って、水晶玉を取りに行く、か。うん、このパターンだとボスいるな」
 アリィシアは益体も無い呟きをしながら髪をほどき、寝間着に使っているサマードレスに着替え始めた。
 旅をしていると、この後にはこういうことが起こるというある程度の予測がついてしまう。いわゆるお約束というやつだ。
 無論エイト達には言わない。言わぬが花だろう。
 蒼い髪を手櫛でときながら、アリィシアはふと、左手に目をやった。
 普段は手袋に隠れて見えないそれ。薬指にはまるそれは――
「アリィシア? ちょっといい?」
 遠慮がちな声に、アリィシアは反射的に左手を隠した。
 見られて困る物ではないが、何となく。
「入っていいぞ」
 そう言うと、緩やかな動きでエイトが入ってきた。




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