異世界の守り人

□占い師と魔術師
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「……眠れない」
 アリィシアは身体を起こして呟いた。
 ルイネロ宅の寝室。日も傾きかけたので、ドルマゲスのことを占うのはまた明日ということになり、アリィシア達はこの家に一泊することになったのである。
 しかし、アリィシアは疲れているにも関わらず、なかなか眠れなかった。
 枕が変わったからではあるまい。ヤンガスのいびきがうるさいからでも――まぁ、ないだろう。
 昨日といい、一体なんだというんだ。
「まずいな……これでは本格的に寝不足になるぞ」
 アリィシアは頭をかきながらベッドから降りた。
 エイト達と同室だということもあり、寝間着には着替えていない。フェンサードレスのマントを外し、ベルトを外しただけの状態だ。
 夜風にでも当たろうと、アリィシアは部屋を出、階段を降りたところで、下にまだ誰かがいることに気が付いた。
「ルイネロさん……」
「やはり起きてきたな、異界の者よ」
 水晶玉が置かれた丸机の前に座ったルイネロは、こちらに視線を向けた。それに対し、アリィシアは手近な壁に背中を預けて微笑する。
「やっぱり気付かれてたか。さすが」
「この程度なら、水晶玉を介さんでも解るよ。おまえさんが人間ではないこともな」
「……」
「最初は何かの間違いかと思ったがな」
 ルイネロはふぅ、と息をつく。
「自分の意思で――来たのではないな」
「自分の意思だよ。……ある意味な」
「そうか。しかし、少し気になるのだが」
 ルイネロは観察するようにアリィシアを見つめた。
「肉体が弱体化しているのは、なぜだ」
「……それはこちらが聞きたい」
 アリィシアはため息をついた。
「本当の力が出せたら、一人でドルマゲスを倒しに行ってるよ」
「勇猛だな。蛮勇とはとても言えそうに無い雰囲気だ。……ふむ。あくまで仮説だが、そうする必要があったと考えるべきだろうな」
「必要、ねぇ。まぁいいさ。失った力は取り戻せばいいだけの話だ。幸い肉体が弱体化しただけで魔法やその他もろもろを失ったわけではないしな」
「そうか。ところで、外に出るならライラスの家まで行け」
「……なぜ?」
「言わずとも解るだろう?」
「……だな」
 アリィシアはふ、と笑い声をもらして、壁から背中を離した。
「……アリィシアよ」
 ルイネロに呼び止められ、アリィシアはドアノブに手をやったまま振り返った。
「おまえが人間ではないのは解る。だが何者かまでは解らなかった。おまえは一体何だ?」
「天使」
 アリィシアはとろけるような極上の笑みを浮かべた。




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