異世界の守り人

□リーザス
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 少年の方を見ると、なぜか涙目だった。話の内容には、少年を泣かせる要素は無かったはずだが。
「お、おまえら俺達を無視しやがって! 一体何のつもりだこらっ」
「何って……」
「相手にしてないってことだ」
 アリィシアの言葉にエイトは少年達が硬化したのを感じた。
「……っふざけやがって!」
 二人の少年はそれぞれの武器を構えた。
 の、だが。

「何をしとるんじゃ!」

 しわがれた怒鳴り声に、少年二人はおろかエイト達も肩をすくめた。
 声の方を見れば、顔に深いしわを刻む老婆がこちらに歩いてくる。どうやら怒っているようだ。
「このかた達はどう見ても旅のかたじゃろうが! 失礼にもほどがあるわい!」
「だ、だって……」
「だっても何も無い! 全く……。失礼しました、旅のかた」
 老婆はエイト達に向き直り、頭を下げた。
「村の子供がご迷惑を」
「い、いえ……それより、何かあったんですか? 盗賊が出たとか」
 エイトが尋ねると、老婆の顔が曇った。
「実は最近、村の者が盗賊に殺されるという事件がありまして」
「殺人、か。随分物騒な話だな」
 隣でアリィシアが顔をしかめた。
「はい。しかも殺されたのがこの村の用心棒をしていたアルバート家のご子息でして、だからこの子達もこんな真似を」
 老婆は少年二人の頭を軽くはたいた。
「ほら、ポルク、マルク。ゼシカお嬢様に頼まれごとをされてたんじゃろ」
「あ! いっけね、忘れてたっ」
 片方の少年がはっとしたように身体をひるがえした。
「行くぞマルク。ゼシカねえちゃんに怒られちまう!」
「あ、待ってよ!」
 もう片方の少年も、慌てたように相棒を追いかけた。それを見届けた老婆は、再びエイト達を見やる。
「そういうわけじゃから、あまり村の中で騒がないでおくれ」
「あ、はい」
 エイトが頷くと、老婆は満足したようにその場から離れた。話すべきことは話した、と判断したのだろう。
「……この村の事件、もしかして」
「あぁ。おそらくドルマゲスがらみだろう」
 アリィシアも同意見のようだった。問題はドルマゲスの居場所と、その殺された人物だが――
「ここでじってしてたって意味が無いでげす。アルバート家んとこ行きやしょう」
「……」
「……」
「ん? どうしたんでげすか?」
「い、いや……」
「……何でもない」
 二人は目を伏せ、ヤンガスから目をそらした。
 言えるわけがない。まさかヤンガスの存在を完全に忘却してしまったなんて。




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