異世界の守り人

□リーザス
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 アルバート家の屋敷は、風景を損なわない風体の家だった。
 端的に言えば質素なのである。勿論名家と言ってもどちらかと言えば田舎なのだし、派手過ぎる家はかえって村人の反感を買うだろう。家主の性格がうかがえる。
「しかしなぁ……家族が死んだ時のこと、そうやすやすと言うだろうか」
「言わないだろうね……でも、何も聞けないわけじゃないだろうしさ」
 エイトの言葉に、アリィシアはまぁな、と肩をすくめた。
「問題は誰に聞くかだが……メイド辺りが口が軽いだろうな」
 メイドというのはどうも口が軽い傾向がある。勿論雇われ女中の場合だが。
 そんなメイドのことを少しばかり履き違えている者もいたが――そもそもダーマ神殿にメイドという職業は無い。あるのは戦闘に適した職業のみである。
 メイドになりたいと言って、最終的にコスプレに走った老人を思い出していたアリィシアは、ひそかに苦笑をもらした。
 そのせいでは無いだろうが、少なからずぼうっとしていたらしい。階段を上がってすぐ、誰かにぶつかってしまった。しかも相手を倒してしまう。
「あぁ、すまない。大丈夫……」
 アリィシアは手を差し伸べかけ、その姿を見て固まってしまった。
 一言で表すなら、悪趣味な男だった。
 ピンクと紫で統一された派手な服に、首に巻かれた意味があるのか解らないファー、金髪はおかっぱで、まるで茸のようだ。
 例えるなら、いかにも毒がありそうな――しかも死ぬたぐいではなく笑い茸のようなわけの解らない症状を起こしそうな茸。
 アリィシアが固まっている内に、エイトが彼を引き起こしていた。
「大丈夫ですか?」
「ま、まぁね〜。これくらい何ともないよぉ」
 間延びしたような喋り方は、アリィシアの表情を更に硬化させた。隣で、ヤンガスが目を丸くしている。
 対して、特に男の姿に感想を持っていなさそうな(実際持って無いだろう)エイトは、彼に尋ねた。
「貴方はアルバート家の方ですか? 聞いた話では、現在アルバート家に男手は無いそうですが……」
「あぁ、うん。僕はアルバートの人間じゃないよぉ。そうじゃなくて、僕はゼシカ・アルバートのフィ〜アンセさ」
「……」
 アリィシアは今すぐ男を殴って縛って川に沈めたいと思ったが、強靭な精神力で抑え込んだ。
 もともと、こういうわけの解らない人間が、アリィシアは一番苦手なのである。理解不可能とはまたわけが違う、解るけど解らないというのが嫌なのだ。
 同じ理由で、軟体動物も避けていた。
 ……のちにそれと相対することになるとは、この時アリィシアは思いもしなかった。




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