異世界の守り人

□塔と像
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 入り組んだ塔の構造は、どうやらヤンガスの頭をオーバーヒートさせたようだった。
「何なんでがすか、この塔は……あ、頭痛いでがす……」
「だったらもういっそ考えるなよ」
 アリィシアはあきれたようにヤンガスを流し見た。
「しかしまあ、これほど複雑な塔は、私も知らないな」
「そうなの?」
 エイトは壁を調べながら振り返った。
「意外だね。アリィシアぐらい旅慣れてたら、経験してそうなものだけど」
「複雑なしかけがほどこされた場所は初めて。構造が複雑なのは経験してるけどな」
「構造としかけって違うの?」
「意味合いが全く違う。行き止まりが幾つもあったり一つの道に複数の分岐点があったりその場所に行かないと階段が現れなかったりな」
「へぇ」
 思った以上に、アリィシアは旅の経験が豊富らしい。困った時は彼女に相談しようとエイトは密かに思った。
 ――と。
「! 魔物かっ」
 アリィシアが突然剣を抜いた。
 振り返り、刃を横に凪ぐ。ぎゃっ、と悲鳴を上げてベビーサタンが地面に倒れ込んだ。
「まずいな、いつの間にか魔物の群れに囲まれていたようだ」
「……みたいだね」
 エイトは背中の剣をしらりと抜いた。
 こちらを見る目、目、目、目、目――!
 どれもこれも、こちらを攻撃する意思表示を持っている。
「うがー! 悩まされた分、暴れるでがすよー!」
 ヤンガスが棍棒片手に突貫した。その隣を、アリィシアが駆ける。
 というか、ヤンガスを追い抜いてしまった。
 ヤンガスはあまり速い方ではないが、それにしてもアリィシアの速さは異常だった。常々思うが、アリィシアは強過ぎる。
 だが、彼女は強くはあっても最強ではないのだ。
「っ、く……!」
 アリィシアはカブトムシの姿をした魔物、かぶとこぞうの攻撃を剣で受け止めた。だが、どうやらうまく受けられなかったらしい。

 キンッ

 澄んだ音を立てて、青銀の剣がアリィシアの手を離れた。




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