異世界の守り人

□ポルトリング
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 青空の下、剣戟の音が響く。エイト達が戦う音だ。
「何も町の入口の前で襲わなくてもいいだろうに!」
 おおきづちを相手にしていたアリィシアは大声を上げた。その声には、疲れがにじんでいる。
 しかし、サーベル狐を相手にしているエイトもまた、口にはしないだけで同じ気持ちだった。
 半分船に乗るため、半分ゼシカを追うためにリーザスからポルトリングという港町までの道を歩いてきたが、少しばかり遠かった。
 それだけでも疲れるのに、魔物まで襲ってくるのだからいらいらするのも当たり前である。
 一番いらついているのはヤンガスで、三人の中で一番年長の彼は、三人の中で一番短気だった。
「うがー! うがー! うがー!!」
 現在ヤンガスはわけの解らない奇声を上げながらこんぼうを振り回している。目が据わっているのは見間違いではないだろう。
 エイトは目の端でそれを確認しながら、サーベル狐の突きを剣で受け止めた。

 バキィッ

「っ……!」
 エイトは目を見開いた。
 突き自体は防げたものの、そのせいで刃が半ばから折れてしまったのである。
 勿論、戦いの真っ最中なのだから惚けてる時間は無い。エイトはサーベル狐に手の平を向け、ギラを放った。
 炎に焼かれながら、サーベル狐は倒れる。それを一瞥した後、エイトは自身の剣を見つめた。
「エイト、無事か? って、剣が無事じゃないな……」
 戦いを終えたらしいアリィシアが駆けつけてきた。エイトの剣を見つめ、眉間にしわを寄せている。
「こりゃもう使い物にならんのぉ。すぐ傍が町の入口でよかったわい」
 馬車から降りたトロデはエイトとアリィシアを見上げ、やれやれとばかりに首を振った。
「思えばおぬし、近衛兵になってからその剣を使っておったからな。とうとうがたが来たというわけか……」
「所詮武器は消耗品だからな。この際だ。この町で、ヤンガスと一緒に武器を買えよ。ヤンガスのも壊れたみたいだし」
「え?」
 エイトは首を傾げてヤンガスを見た。魔物は逃げたらしい。周りには魔物はおろか、死体もない。
 肩で息をしているヤンガスの手には、へし折れたこんぼうの柄だけがあった。




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