異世界の守り人

□ポルトリング
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 ポルトリング。アルバート家が所有する港町。住民の大半は船乗りであり、店の大半は露店、石畳がしかれた潮の香り漂う町である。
 武器を買う前に情報収集を、というエイトの意見により、アリィシア達は町を歩き回っていた。
 そこで得られたのは、定期船が現在停止しているという事実だった。理由は今のところ解らないが、それによりここに留まらざるをえない人々が大勢いるようである。
「となると、ゼシカはここにいるかもな」
「定期船が出なくなったの、最近のことじゃないみたいだしね」
 定期船の泊まっているところに向かいながら、アリィシアとエイトは他愛無い話をしていた。
「定期船でがすか……あっしもこっちに来る時、利用させてもらいやした」
「そうなの?」
「はい。その時はまだ山賊に戻る前でげした」
「地元じゃ顔が知られ過ぎてたから――だっけ」
 アリィシアが呟くと、ヤンガスは頷いた。
「そうでがす。山賊だと誰も知らない場所でと思ったんでがすが……ままならないものでげす」
「そういうもんだよ。私なんて、故郷の服着てたらそれが風変わりって理由で旅芸人だと思われたんだから」
「そうなの?」
 エイトが目を丸くした。心無し唇が震えているのは、気のせいということにしよう。
「あぁ。今度見せようか? 馬車に置いてある私の荷物袋に入ってるから」
「あー、あの……」
「異次元袋でげすか」
 アリィシアが持っている袋は天使界で支給された特殊なもので、見た目は少し大きな袋だが、幾ら入れても限界が無いという代物である。
 アリィシアはあの袋のことを特殊な魔法がかけられた袋だと説明したが(嘘は言ってない、真実を言ってないだけ)、エイト達は勝手に異次元袋と呼んでいた。
 まぁ――間違ってはないが。むしろ言い得て妙とだと思った。
 バルガはたしか、びっくり袋と呼んでいた。まるで笑い袋の親戚のようである。
「……ん? おいあれ、ゼシカじゃないか」
「え? あ、本当だ」
 アリィシアは二人の男女を指差した。
 女の方は見間違えようが無い、ゼシカだ。眉をつり上げ、何やら怒っている。
 もう一人は、どうやら船乗りのようである。ゼシカに睨まれ、たじたじのようだ。
 三人は顔を見合わせ、ゼシカと船乗りに近付いた。




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