異世界の守り人

□ポルトリング
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「だから、早く船を出して! 私は一刻も早く仇を追いかけなきゃいけないの!」
「ですが、船を出すと魔物が……」
「そんなの私が倒すから!」
「り、リーザス家のお嬢様にそんなことをさせられませんよ!」
「だから私はもうリーザス家の人間じゃないってば……あら?」
 こちらに気付いたゼシカが、目を瞬いた。
「貴方達、リーザスで待っててって言ったのに……」
「君が私達に気付かないから追いかけてきたんだよ」
「あー……」
 ゼシカが気まずそうに頬をかいた。しかしふと、何かを思い付いたようにこちらを凝視した。
「そうか……貴方達なら……」
「? 何?」
 エイトの不審げな声を無視し、ゼシカは船乗りに向き直った。
「ねぇ、私が戦わなければいいのよね?」
「は……そりゃあ」
「何なんでがすか……?」
 状況が飲み込めないアリィシア達に、ゼシカは説明を始めた。
「定期船が動いてないことは、もう知ってるわよね」
「まぁ……一応」
「定期船が動かないのはね、ある魔物が船の邪魔をしているからなの」
「邪魔って、航路をか?」
「そう。その魔物のせいで船には色々被害が出ててね、しかも毎回邪魔してくるもんだから、完全に向こう側とは連絡が取れないのよ」
「それは大変でげすね」
「そうそう。それで私が倒そうと思ったんだけど、そんなことさせられないの一点張りでさ」
「それで、私達に代わりに倒してほしいって?」
「ええ」
「……うーん」
 アリィシアはエイトに視線を送った。
「どう思う?」
「……請け負ってもいいと思うけど」
「定期船は、あっしらも利用するでがしょうからなぁ」
「受けてくれるのね! じゃあさっそく……」
「待て待て。そうせかすな」
 ぱっと笑顔を咲かしたゼシカをアリィシアは慌てて制した。
「こっちはここに来るまでの道中で疲れてるんだ。それに仲間二人の武器も壊れてしまってな、最低でも一日待ってくれ」
「あ……そうだったの」
 ゼシカは喜色から一転、申しわけなさそうな顔をした。
「そうよね。それもそうよね――解ったわ。じゃあ明日、またここに来てくれる?」
「それでいいか、エイト」
 声をかけると、エイトは目を瞬いた後、こくりと頷いた。
「うん。それでいいよ。それじゃ、また明日ね」
 エイトが向けた微笑にゼシカは一瞬虚を突かれたような顔をしたが、しばらくして彼に笑みを返した。




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