異世界の守り人
□船上の攻防戦
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船着場に行くと、すでにゼシカはその場で待ち構えていた。彼女は宿屋ではなく船着場の客室で泊まったそうなので、当然と言えば当然かもしれない。
「来たわね。……あら、お二人さんは装備を変えたのね」
こちらに気が付いたゼシカは、エイトの鱗の鎧とヤンガスの皮の腰巻きを見て小首を傾げた。
「貴女は……盾を付けただけ? ここで売ってる物じゃないみたいだけど」
「まぁな」
アリィシアは右腕の盾をかかげて見せた。
「もう準備は万端だよ。すぐに船は出せる?」
エイトが尋ねると、ゼシカは後ろの船乗りを振り返った。船乗りは頷く。
「いいみたいよ。それじゃ、行きましょう」
ゼシカは船までの案内を買って出た。
奥に進むと、やがて大きな船が目の前に現れる。
美麗ではないが、頑丈そうな作りの船で、ゆうに十人二十人は運べそうだった。
「こういう船に、普通の魔物は近付けないんだけどなぁ。それに護衛の戦士がいたり魔物が出ない航路を選んだりしてるはずなんだけど」
「じゃあ、海の主かな、敵は」
エイトの呟きを、アリィシアは律儀に拾う。そんな二人の会話に、ゼシカは振り返って首を傾げた。
「よく知っているわね、貴方。船の知識があるの?」
「最低限は。でも実際に船の乗るのは初めてだよ」
エイトは髪をかいた。
「それで、船に戦士はいたの?」
「いたわ。五人ほどね。……でも、全員やられた」
「それなのに、ゼシカのねえちゃんは一人で戦おうとしてたんでげすか? 無謀でげすよ」
ヤンガスは顔をしかめた。ゼシカも今更ながらそれに気付いたのか、苦笑している。
「死人が出てないのがせめてもの救いだわ。……でも船は手酷くやられてて、無事なのはこの一隻だけなの。明日になれば一つ直るらしいけど、それ以外は駄目。まぁでも、だからこの船で多少暴れても大丈夫よ」
「船乗りが聞いたら悲鳴上げるぞ、それ……」
船に乗り込みながら言うゼシカに、さしものアリィシアも顔をひきつらせた。
「……被害、出さないように戦おうね」
『……おー』
エイトの言葉に、アリィシアとヤンガスは力無く応じる。遠くで、出航を告げる声が響いた。
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