異世界の守り人

□疑念
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 川を横断するように建てられた建物に、全員が驚いた。
「ここって確か、マイエラ修道院よね」
「船着場で言っていた、世界三大巡礼地だな」
 ゼシカは目をまばたかせ、船着場でいつの間にか情報収集していたらしいアリィシアがふむ、と唸る。
「話には聞いていたが、本当に川の上に建てられているんだな」
 川の両側を結ぶ橋。そこに繋がって建てられた建築物は、豪奢ではないにしろ、立派な建物だった。
 入口には頑丈そうな木でできた扉があり、その上には丸いステンドグラスがはめられている。馬に乗った騎士が描かれたそれは、何とも美麗だった。
「川を渡ろうと思ったら、絶対ここに来なきゃいけないんだね」
 エイトは辺りを見渡した。建物の入口付近には、巡礼者とおぼしき人々が行き来している。
「……その辺が何か、策略臭いなぁ」
「だな」
 エイトとアリィシアは苦笑を交わした。
「ねぇ、せっかくだし色々見て回らない?」
 ゼシカの提案に、ヤンガスの表情が固まった。馬車の中のトロデは、何の反応も無い。
「け、けどこんなとこにいても意味無ぇでがすよ!」
「どうかな。案外こういう場所にドルマゲスの情報があるかもしれないぞ?」
 アリィシアの言葉に、ヤンガスはうっ、と呻く。
「……正直な話、あっしはこういうとこは苦手なんでげす。こう改まったところが」
 その呟きは聞こえていないらしく、アリィシアとゼシカは建物を見ながらわいわい話していた。
「じゃあヤンガスは、陛下と姫と一緒に待っていてくれる?」
 さすがに可哀想になってきたエイトは、ヤンガスに助け舟を出した。
「僕とアリィシアとゼシカとで中見て回るからさ。それでいい?」
「兄貴がそう言われるなら」
 ヤンガスは頷き、馬車と共に橋の向こう側に向かっていった。
「ま、ヤンガスは元山賊だからな。こういう場所には耐えられないんだろう」
 アリィシアは軽く笑った。どうやら彼女、ヤンガスをからかっていたらしい。おそらく、くすくす笑っているゼシカもだ。
「二人共、あんまりヤンガスをいじめてやるなよ」
 それをとがめると、二人は笑いながらはーい、などと軽く答えた。
 ……どうやらこの二人、根っこのところでは似ているらしい。




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