異世界の守り人

□疑念
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 中は思ったよりも質素で、目立ったものは特に無かった。
 目立つのは、入って正面に立つフードをかぶり、杖を持った修道女の像と、壁にかけられた歴代修道院院長の肖像画ぐらいである。
 しかし、エイトはその中にいた巡礼者と修道士達に違和感を感じた。
 違和感の正体は、すぐに知れることになる。
「何か……やたらに寄付金をお願いされるね」
 エイトの言葉にアリィシアは頷き、ゼシカは複雑そうな顔をした。
 先程から、話しかける修道士から情報より先に寄付の話を持ちかけられる。無いと言えば、すぐさま離れていった。
「確かに教会やその他そういう関連は、寄付や布施で色々まかなっているが……」
 アリィシアの片眉が持ち上がった。
「まるで金そのものが目的のようだな」
「ねぇ、ちょっと。ここって一応聖地でしょ?」
 ゼシカはアリィシアとは違い、心の内の感情をあらわにした。
「なのに、何で神の教えよりお金なのよっ」
「ゼシカ、落ち着いて――って」
 ゼシカをなだめようと首を巡らせたエイトは、すぐ傍を通った人物に接触してしまった。
 肩をぶつけたエイトが驚いて顔を上げると、相手は屈強そうな男だった。
 青い服を着用し、腰にはレイピアを帯びている。首から十字架をかけているところを見るに、どうやら聖職者のようだ。
 青衣イコールアリィシアという方程式が頭の中で確立されつつあったエイトは面喰らいつつも、謝ろうとした。しかしそれより早く、男の方がエイトの襟元を掴む。
「貴様、聖堂騎士団の団員たるこの俺にぶつかっておいて、謝罪も無しか!?」
「えっ」
 エイトは目を丸くする。彼が口にした肩書きに反する、チンピラのような反応に驚いたのだ。
「ちょ、まっ……」
「無礼な奴だ。礼儀というものを教えてやる」
 男は片腕でエイトを捕まえたまま、あいた手をレイピアに持っていった。
 貴方は常識を学んでくれ、とエイトはツッコむ前に。

 ギイィィィィィィンッ

 金属音が辺りに響き渡った。
 その音に誰もが――柄に手をかけた男、怒鳴ろうと口を開きかけたゼシカ共々――固まった。
「刃を向ければ、こちらも刃を向けなければならないが、それでもいいという行動と取っていいよな」
 アリィシアはそう言いながら、剣を鞘に戻した。
「先に主張しよう。これは正当防衛だ」




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