異世界の守り人
□嘆きの亡霊
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下半身を無くし、力無く倒れ伏す亡霊を、アリィシアはじっと見つめた。
伝染病により苦しみ抜いて死んだ哀しい亡霊。ずっと一人で、物言わぬ仲間を見続けていたのだろうか。
それは、とても哀しい。
「もう、苦しまなくていいんだ」
アリィシアは、そう言って亡霊を抱き寄せた。後ろから息を飲む声が聞こえる。
当たり前だろう。もしかしたらまだ攻撃してくるかもしれないのに、無警戒に触れたりしたのだから。
けれどアリィシアには、彼にもう戦う力が無いことを感じていた。
「もう苦しまなくていいから、もう嘆かなくていいから、だから――もう神の元へ行きなさい」
「神、ノ、元ヘ……?」
「そう。神も……先に神の元へ行った仲間も、きっと待ってる」
「ォ、ォォオオオ……!」
亡霊の身体が次第に崩れ始める。
「神ヨ、神ヨオォォォォ……今、オ傍ニ参リマス……」
か細い声と共に、亡霊の身体は溶けるように消えた。
彼がいた後には錆の浮いたロザリオのみが残される。それを拾い上げ、アリィシアは仲間を振り返った。
「アリィシア……」
「大丈夫」
アリィシアはエイトに微笑みを返し、ロザリオを懐にしまった。
「彼はちゃんと、神の元に行ったから」
「……そっか」
エイトは何か言いたそうだったが、しばらくして笑みを返してくれた。
「それじゃあ行こうか。……こんなところで時間を喰っている場合じゃない」
エイトは槍を背負い、盾を付けなおした。
「この先に、きっとドルマゲスがいる」
「よーし、気合い入ってきたでがすよ!」
「ドルマゲス……!」
「……行くぞ」
アリィシアの言葉に、全員頷く。そして修道院の奥へと進んでいった。
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