異世界の守り人
□幕間二「キユウとの出会い」
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ベクセリアから少し離れた場所にある遺跡。そこに、病を治す方法があるとルーフィンは解読したらしい。しかもこの病、病気ではなく呪いなのだとか。
ルーフィンから聞いた話を町長に話すと、町長はしぶしぶ(そこでしぶっちゃ駄目だろ、とキユウは内心ツッコんだ)遺跡の鍵を渡してきた。これで遺跡の扉が開く。そうすれば、後は呪いの元凶を封印するだけだ。
とはいえ、問題もあった。
遺跡の中には魔物が大勢おり、要塞のような町であるベクセリアはともかく、戦闘力皆無のルーフィンを守りながらの戦闘はいささか難しい。
せめてもう一人、欲を言えば二人いれば……
「この町の病は、普通の病じゃない」
突然凛とした、それでいて澄んだ声が響いた。
驚いて辺りを見渡すと、蒼い髪の少女がベンチに腰かけているのを見付けた。
髪の色を見るにどうやら先程の旅人のようで、少し離れているものの顔をはっきり判別することができた。
幼いながら美しい顔は凛々しく、切れ長の目に収まる紅い瞳はルビーのように輝いている。一風変わった服装をまとってはいるものの、腰に剣を帯びた姿は一角の戦士の様子だ。
そんな彼女の前に立つのは、おそらく同行者と思われる青年だった。
つんつんと逆立った銀の短髪に銀の双眸、顔立ちは悪くないが、少女と一緒だと少し地味に見えてしまう。鉄の槍を抱えてはいるものの、服装からしてどうやら僧侶のようだ。
「普通じゃない? どういうことだ?」
青年が尋ねると、少女は解らない、と首を振った。
「けど、何か違和感が……ここの守護天使がいたら何か解るんだろうが、どこにも見あたらないし」
守護天使が見あたらない?
キユウは首を傾げた。
天使は見えない存在だというのに、彼女はそれが見えるということなのだろうか。そんな馬鹿な。
キユウが頭を悩ませている間にも、二人の会話は続いていた。
「そういや、セントシュタインの天使もいなかったっつってたな。もしかして、おまえと同じ状態になってたりするんじゃないのか?」
「無い――と思う。だいたいそうだったら声ぐらいかけるだろ。天使の数は少なくないが、一応みんな顔見知りだし、向こうだって私のことを知っているはずだ。その、私の髪と瞳は、天使界でも珍しい色だったから」
「あー……」
言いにくそうに語る少女に、青年は複雑そうな表情をする。しばらく沈黙が続くが、やがて少女が立ち上がった。
「とにかく、ここで会話していてもらちがあかない。もう少し情報を――おや?」
と。少女の視線がこちらを向いた。少しだけ目を見開き、小首を傾げた。
「誰だ、君は」
それはこっちは訊きたい。君達は一体何だ。
キユウはため息をつきたくなった。
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