異世界の守り人

□月夜の下、教会にて
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 ドニの町で朝食(ククールの旅立ちの話を聞いた女性達のせいで幾度となく中断された)をすませた後、どこに行くか話し合いになった。
 ドルマゲスの行方は途絶え、今のところ手がかり一つ無い。
 かと言ってここにとどまっているわけにもいかず悩んでいると、ヤンガスがアスカンタはどうだろうかと提案した。
 アスカンタとはこの大陸を収める国で、エイトの記憶が確かなら、現国王の名はパヴァンといったはずである。
 トロデーンで聞き及んだ限りでは実に温厚な王らしく、しかし最近はなぜか噂一つ聞かない。
 それはククールも同じらしく、渋い顔をしてそのむねを話した。
 ヤンガスはどうやらそのことは知らなかったらしく、しかし他に行くあても無いので、アスカンタに行くことになったのだが――


「しかし、どうしてアスカンタの情報がマイエラにこなくなったのだろうな」
 アリィシアはシチューを口に運びながら首を傾げた。
 食事中ということもあり、さすがに帽子は外している。しかし、なぜか手袋はしたままだ。
「さぁな。詳しいことは何も。ただ、アスカンタの話を聞かなくなったのは二年前からだな」
 ククールはパンをちぎって口に放り込んだ。こちらは手袋を外している。
「国主であるパヴァン王はお優しい方だと聞いたけど……本当にどうしたんだろうね」
 エイトはスプーンで口元を押さえながら眉をひそめた。
「でも、少なくともドルマゲスは関係無いでしょうね。二年前なんだから」
 ゼシカはスプーンでスープをかき混ぜた。
「……おぬしら、喰うか喋るかどちらにしろ」
 トロデの言葉に、若者四人はうっ、という顔をした。ちなみに、ヤンガスは黙々と(むしろがつがつと)食べている。
「しかし、おぬしらが気になるのも無理は無い。わしもおかしいと思っとった。……まぁ、この姿では調べられんがな」
 すでに食事を終えていたトロデは、コーヒーをすすりつつぽつりとこぼした。
「お気になるのでしたら、僕がかの国について調べましょうか? アスカンタに直接行けば、必要な情報が得られるでしょう」
「うむ。頼むぞ、エイトよ」
「はっ」
 エイトは軽く低頭した後、食器を置いた。
「ごちそうさま」
「あ、エイト。食器は私が片付けておくわよ。鎧着直すの、大変でしょ」
「着慣れてるから大丈夫だけど……でも、お願いしようかな」
 エイトはゼシカの行為に甘えることにした。
 馬車に近付き、ミーティアの背中を撫でると、ミーティアは小さくいなないて目を細めた。エイトもそれに微笑を返し、馬車の中に入る。
 馬車から降りた時には、その腕には鎧が抱えられていた。
 青銅の板金でできた上体や腰まで覆う重い鎧で、ドニの町の行商人から買い求めたものである。
 青銅の盾を腕に通し、鉄の槍を背負って振り返ると、仲間はすでに旅支度を始めていた。
 アリィシアやゼシカ、ククールは装備を変えていないが、ヤンガスはエイトと同じく様変わりしている。
 皮の腰巻きに代わり、小さな鎖を編み上げて造られた鎧を着込み、頭には今までのとげが幾つも付いた帽子にかわってスライムのような形の帽子をかぶっている。鎧の方はドニ、帽子は船着き場で買い求めたものだ。
 エイトはそんな仲間達を眺めながら、頭にターバンを巻いた。
 今まで付けていたバンダナよりずっと頑丈なもので、何重も巻き付けているせいか皮の帽子より丈夫である。
「じゃ、行こうか」
 エイトが言うと、仲間達は頷いた。




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