異世界の守り人
□喪色の王
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王妃の死。人々の話を聞いて知り至ったのは、そんな事実だった。
問題は、王妃が死んでから経過した時間である。
「二年前に王妃が死んだってのに、まだ喪中かよ」
ククールがふてくされたように呟いた。
情報収集そっちのけで女性に話しかけていたため、エイトが注意したところ、こんな風になってしまったのである。
一応ひかえてるようだが、不機嫌さは隠そうともしていない。
エイトはその辺りは無視を決め込み、言葉のみに反応することにした。
「確かに、幾らなんでも長過ぎるよね。国政も怠ってるみたいだし」
今は大臣などの文官がうまくやっているらしいが、このままではこの国の王制がなりたたなくなってしまう。
それどころか、最悪国が滅びるかもしれない。
結局、王国というのは王がしっかりしなければなり立たないのだ。
「この国の王と王妃は相当仲がよろしかったみたいだけど、けど少し、過ぎてるよね」
我ながら辛辣な言葉だとは思う。しかし、事実思ったことなのだからしかたがない。
エイトに同意するように頷いたククールが、ふと苦笑を浮かべた。
「もし国王相手じゃなかったら、アリィシアの奴、うっとうしい! って平手打ちでもかますんじゃねぇの?」
「確かに……」
エイトもまた苦笑をもらした。
仲間内の中でも一番雄々しい彼女のことである。今回のことに苛立ちを感じているかもしれない。
「でもさすがに平手打ちは無いんじゃない?」
「そうか? じゃあ怒鳴りつけるとか」
「あはは、それはありそう――いだっ」
「あでっ」
突然の頭上からの一撃に、エイトとククールは思わず膝をついた。
誰だと顔を上げると、黒いロングブーツと青い裾が目に映る。
「あ……」
「げ……」
「人をなんだと思ってるんだ」
黒いロングブーツの主――もといアリィシアはため息をついた。
「一国の王に、そんなことするわけがないだろうが」
「そうそう。私だってそんなことしないわよ」
アリィシアの後ろから、ゼシカが顔を出した。正直なところ、その言葉に信頼性は無いが。
「姉御もゼシカねえちゃんも気性が荒いでげすから、しょうがないんじゃあ……」
ヤンガスの呟きは、二人に黙殺された。
「あ、あはは……ど、どうだった? 何か解った?」
エイトが苦笑しながら尋ねると、アリィシアは鷹揚に頷いた。
「あぁ。城で話を聞いてきた」
「城に入ったの?」
「あぁ。どうも王は、昼間は部屋に引きこもって、夜間は玉座にすがりついているようだ」
「王じゃなかったら、ただの不審者じゃねぇか……」
ククールの頬が引きつった。
さしものエイトもあきれ返り、閉口する。
「酷いだろう? 本格的にまずい。王制どころか国そのものが成り立たなくなる」
アリィシアは顔をしかめた。
「……勿論、他にも収穫はあったがな。その話は夜だ」
「夜?」
「夜、ある人物と教会で待ち合わせている」
アリィシアは紅い瞳を細めて腕を組んだ。
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