風神
□高校一年生 春と自転車
1ページ/4ページ
箱根の山頂の出逢いから、毎日、彼と山を登っていた。
いつの間にかお互いに名前で呼んでいたが、お互いに家や家族の話はしなかった。
「桜は自転車競技部にはいるのかね?」
「入るよ。マネージャーやりながら、女子の大会に出るつもり。」
私は箱根の山頂で尽八とアクエリアスを飲んでいた。
「桜は風を味方につけて走るな。クライマーではあるが、その他も適度にこなしている。」
「良く言われる。風神のようだとね。」
私がニヤリと笑って見せると、尽八もニヤリと笑ってきた。
「俺は山神と良く言われるぞ。」
私は尽八に微笑む。
「それは奇遇だね。」
私と尽八は中学時代に登ってきた山の話に盛り上がった。
そんな日々を過ごしながら、入学式も終え、4月も半ばになると、2人共自転車競技部に入部した。
それからも早朝に一緒に山へ行っていた。
私は髪の色から学校では浮いていた。
尽八がいなかったら1人だっただろう。
そして、同じクラスには荒北靖友という、問題児がいた。
荒北は私が嫌いだった。
浮いていて、尽八がいて、勉強もそれなりにこなす私は面白くなかったと後から聞いた。