風神

□高校一年生 春と自転車
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箱根の山頂の出逢いから、毎日、彼と山を登っていた。

いつの間にかお互いに名前で呼んでいたが、お互いに家や家族の話はしなかった。


「桜は自転車競技部にはいるのかね?」

「入るよ。マネージャーやりながら、女子の大会に出るつもり。」

私は箱根の山頂で尽八とアクエリアスを飲んでいた。

「桜は風を味方につけて走るな。クライマーではあるが、その他も適度にこなしている。」

「良く言われる。風神のようだとね。」

私がニヤリと笑って見せると、尽八もニヤリと笑ってきた。

「俺は山神と良く言われるぞ。」

私は尽八に微笑む。

「それは奇遇だね。」
私と尽八は中学時代に登ってきた山の話に盛り上がった。


そんな日々を過ごしながら、入学式も終え、4月も半ばになると、2人共自転車競技部に入部した。

それからも早朝に一緒に山へ行っていた。

私は髪の色から学校では浮いていた。

尽八がいなかったら1人だっただろう。






そして、同じクラスには荒北靖友という、問題児がいた。

荒北は私が嫌いだった。

浮いていて、尽八がいて、勉強もそれなりにこなす私は面白くなかったと後から聞いた。
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