風神

□高校二年生 秋と祭りと恋心
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私は週末のみの東堂庵のお手伝いを一日だけ休んだ。



千葉の総北メンバーから、文化祭のお誘いを貰ったのだ。









「金城!田所っち!久しぶり!

祐介は昨日の電話ぶり!」

私は学校の裏門で自転車競技部の人達と待ち合わせていた。

「去年登れなかったから登りたかったんだ!裏門坂!」

駅からはロードバイクでここまで来た。

「竜堂って…やっぱりクライマーなんだな…」

田所っちの言葉に私は首を傾げた。

「さて、一年はどこ?紹介してくれるんでしょ?」

コーチングするのに、やっぱり本人を知りたい。

「あぁ、三人いるんだ。頼む。」

金城の言葉にワクワクする。

そして、部室で三人の一年を見た。

「どうも!箱根学園自転車競技部の竜堂桜です。巻島祐介の従姉妹です。」

私の言葉に嫌そうな顔をされた。

「あ、寿一の事?ごめんね。今、根性入れ直させてるから。」

私の言葉に祐介が呆れている。

「私のコーチングを三割。こっちに貸すことで手打ちにして貰ったの。」

「コーチングの実力は俺っしょ。

後は箱根の山神東堂尽八、箱根の狼の荒北靖友。」

祐介の言葉に一年がざわついた。

「もう既にメールでメニューを渡しているけど、やっぱり実物見たくて、文化祭を口実に休みを貰ったの。」

私は一年に微笑む。

「箱根学園の一年も面白いのいるけど…総北も面白いのいるね。

とりあえず、私の引退まで、宜しくね。」

私の言葉に一年が頭を下げて、クラスの出し物へと戻る。



去年は私がスランプで、色々と心配させた。


「総北メンバーも面白い事になりそうだね。」

私の言葉に金城が頷く。

「総北最強のチームで挑むさ。」

寿一にそっくりだ。

「箱根学園も同じだし。」

私が返すと、祐介が私にミルクティーを買ってきてくれる。

「桜は紅茶っしょ?」

イギリスにいて、紅茶が大好きなのを覚えていてくれる。

「ありがとう、祐介。」

「さて、俺達も出し物に顔をださねぇとな。また、後でな。」

田所っちと金城が部室を出て行った。

「祐介。千葉はホッとするね。」

「なら、帰って来いっしょ…」

私はでも、箱根学園自転車競技部を愛おしく思う。

「無理だよ。箱根学園も私の居場所があるもの。」

「尽八に攫われそうで怖いっしょ…。当たり前に隣にいた桜は今は違う奴の隣だって…」

祐介が私を抱きしめた。

私は祐介の頭を撫でる。

「尽八は必死に私を落とそうとしてるからね。
祐介も頑張ってくれないと、尽八のお嫁さんかな?」

私の言葉に祐介が震える。


「毎日、メールする。贈り物もこまめにするっしょ…」

祐介が私のほっぺにキスをした。

「まだ、決めるなっしょ…」

私は小さく頷く。

「まだ…決めれ無いよ…」

私の顔は赤かったと思う。









自転車競技部の人達と交流しながら、夕方になり、私は箱根へと戻る。








駅には尽八がいた。

「巻ちゃんが、乗った電車を教えてくれたのでな。」

そう言うと、私が抱えていたロードバイクのバッグを持ってくれる。


私は、まだ、祐介と尽八のどちらが好きなのかがわからなかった。









箱根学園では体育祭。


私は体操服の上からミニスカを履き、ボンボンを持って応援する。

今年は仲間はクラスが違うけど、靖友と悠理は同じ赤組だった。


「靖友!どう?」

「あん!?」

私の登場に靖友の近くにいた、藤原と古蹟と葦木場が固まった。

「桜!可愛い!」

そして、悠理が飛びついてきた。

「桜…それ、東堂にみせたかぁ?」

靖友の質問に首を横に振る。

「よし、メールで見せる!写メとんぞ。」

靖友の何かを企む顔。

私はでも、楽しくて、靖友に任せた。








お昼休憩で尽八に攫われた。

「尽八?」

「桜!可愛い過ぎていかん!」

尽八の発言に驚く。

「でも…応援団の衣装だから、一日これだよ?」

「なら!荒北より、先に…見せて欲しかった…」

あぁ、そこが本音か。

「ごめんね?お昼休憩は尽八といるから。」

そう言うと、祐介が尽八に電話してきた。

尽八の携帯から私の写メが来たらしい。


「靖友…」

午前中に、一度、白組に行くって言ってた。

そして。

尽八は祐介と電話してお昼休憩が終わってしまったのだ。









体育祭が終わると、今シーズンのレースが大詰めだ。




葦木場は部内の一年レースで勝ったものの、外の大会では成績は残せず、またメニューの日々だ。


泉田はスプリンターの大会を出て、ここからはインターハイに向けての筋肉強化に入る。


黒田はクライマーに自分では確定要素が足りていないとわかっていて、何故か荒北を敵視して、スタイルを研究している。
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