novel

□握った手から
2ページ/2ページ






「意外と、雨酷いっスねぇ」

「…そうだな」




先ほどよりも雨は酷い

傘を大きな音をたて叩く




「……なぁ、浦原サン」

「なんすか?」

「今更なんだが…なんで、結局相合い傘なんだ?」




少年はそう言い
自分の握る傘を指差した




「あぁ、あたしの家に傘って、これ一本しか無いんスよね」




嘘だ
本当は後何本かある

だが、それでは楽しくない




「……そうなのか…」




案外あっさりと少年は騙された

コッソリと少年へと目線を向けると
同じように少年はこちらへと目線を向けていた




「なぁ、浦原サン」

「なんすか?」

「あの………て、……」

「……て…?」

「………手、……繋いで、いいか……?///」




そう言い、少年は顔を真っ赤に染めた

恥ずかしそうに少年は俯いたが
耳まで赤いので丸分りだ


驚いて、返事をせずにいると
少年は顔をあげ




「あ!その、…急に、変な事言って悪ぃ……その、…忘れてくれ…」



そう言って俯いてしまった




⋯―しまった―




返事をするべきだった

何を呆けているんだ自分は




「黒崎サン」




名前を呼ぶと

少年は肩をビクリと震わせた




「手……繋ぎましょう」




そう言い、手を差し出すと

少年はまた顔を真っ赤に染め
そして、嬉しそうに顔を緩めた





握った手から
(優しさを感じるんだ)




雨が止み
太陽が雲から表れ出
空に虹が架かる


その様子を
二人の男達が、手を繋いで幸せそうに眺めていた




前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ