novel
□握った手から
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「意外と、雨酷いっスねぇ」
「…そうだな」
先ほどよりも雨は酷い
傘を大きな音をたて叩く
「……なぁ、浦原サン」
「なんすか?」
「今更なんだが…なんで、結局相合い傘なんだ?」
少年はそう言い
自分の握る傘を指差した
「あぁ、あたしの家に傘って、これ一本しか無いんスよね」
嘘だ
本当は後何本かある
だが、それでは楽しくない
「……そうなのか…」
案外あっさりと少年は騙された
コッソリと少年へと目線を向けると
同じように少年はこちらへと目線を向けていた
「なぁ、浦原サン」
「なんすか?」
「あの………て、……」
「……て…?」
「………手、……繋いで、いいか……?///」
そう言い、少年は顔を真っ赤に染めた
恥ずかしそうに少年は俯いたが
耳まで赤いので丸分りだ
驚いて、返事をせずにいると
少年は顔をあげ
「あ!その、…急に、変な事言って悪ぃ……その、…忘れてくれ…」
そう言って俯いてしまった
⋯―しまった―
返事をするべきだった
何を呆けているんだ自分は
「黒崎サン」
名前を呼ぶと
少年は肩をビクリと震わせた
「手……繋ぎましょう」
そう言い、手を差し出すと
少年はまた顔を真っ赤に染め
そして、嬉しそうに顔を緩めた
握った手から
(優しさを感じるんだ)
雨が止み
太陽が雲から表れ出
空に虹が架かる
その様子を
二人の男達が、手を繋いで幸せそうに眺めていた
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