novel
□君の涙なら美しいと思ったんだ
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(石田視点)
空っぽの教室が夕暮れの橙色に染まる
その橙は、目の前に居る人と同じ色をしていた
「黒崎、一度でいいから僕に見せてくれないか?」
「は?お前、どうかしたかよ。嫌に決まってんだろ」
「少しでいいから」
強引に頼めば
彼は諦めたように溜息を吐き
そっと考え込むように俯き、瞼を下ろす。
その様子を、静かに見つめる。
「少し思い出せば、簡単だろう?」
「うっせぇよ。今、考えてんだ」
悪態を吐きつつも必死に思い出そうとしている彼を
微かに愛おしく思う
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