庭球部屋

□気分次第で
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 ある冬の日の事。

授業が終わったと時を同じくして、一通のメールが届いた。

送信者の名を見て白石は頬を緩ませた。

不二周助。

全国大会が終わって程なくした頃、思い切って告白をして付き合い始めた相手だ。

何が書かれているのかとメールを開くと、白石は己の目を疑った。

『今大阪に来てるんだけど、会えないかな?』

次の逢瀬を心待ちにしていた白石にとっては、あり得ない程の嬉しい誘い。

すぐに返信ボタンを押すと、今居る場所を問うメールを返した。

そのまま飛び出すように教室を出て走り出す。

が、校門まで来てその足を止めた。

何故ならそこに不二の姿があったからだ。

突然の訪問に、不意を突いた待ち伏せ。

白石はしてやられた気分になる。

何となく悔しくなって、嬉しさを隠すように言った。

「何で平日に東京の人間がこないな所に居んねん。」

不二は感情の読めない笑みを顔に貼り付けたまま、

「ちょっと私用があってね。ついでに寄ってみたんだ。」

と返した。

自分に会いに来たのだと言わない所が不二らしいと思いつつ、白石は苦笑した。

「まぁ理由は何でも構へんけど、折角やからデートしようや。」

そう気持ちを切り換えて提案したのだが、不二はクスリと一つ笑ってこう言った。

「ごめん。もう帰らないといけないから…」

では何の為に来たのだとツッこもうとした白石だったが、それは次の言葉で遮られた。

「ここに来たのは君の顔が見たかっただけ。」

思わぬ一言に白石は硬直する。

突き放されたかと思うと、今度は引き寄せにくる。

不二はどこまでも気紛れで、嫌になるほど自分を振り回してくれる。

それも、恐らくは不二の気分次第で振り回されている。

それでも不二に益々惹かれて行く。

これもまた不二の計算の内なのだろうか?

「俺の顔が見たいんやったら、次はついでやのうて、俺の為に来てぇや。」

本気で告げた言葉さえ、

「気が向いたらね。」

と、先程とはうって変わって冷めた答え。

この気紛れな恋人の心が読めるようになるまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。





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猫の日!という事で、突発的に書いてみました。
「猫=気紛れ」なイメージで^^;
ラブラブじゃない蔵不二も萌えなんですよね☆
ていうか、今までラブラブなの書いたかお前?と自分にツッこんでみる…
どうも蔵不二だと不二がツンデレを発揮してしまうようで;;
それでは、読んで頂きありがとうございました!
(11.02.22)

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