成田CP
□from the start to the end 〜第2話『first kiss』
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インターハイが終わり、三年生は部活を引退した。
部室に行っても、体育館に行っても、当然ながら三年生の姿など何処にも見られない。
お陰で忍の苛々は頂点に達しかけていた。
このままでは部活にも支障が出かねないと判断した忍は、休み時間に三年生のフロアに足を運んでいた。
目指すはもちろん直也のクラス。
この日バスケ部は休養日で、チャンスは今日しかないと思った。
教室の入り口から顔を出すと、入ってすぐ目に付く位置に席を持つ直也の姿は簡単に見つかった。
直也は忍に気づくと、
「どうした?」
と問いかけた。
「お話があるのですが、放課後時間空いてますか?」
どこか切羽詰った忍の様子に、直也は少し考えた後、
「少しなら。」
と答えた。
「では部室で待ってますので。」
それだけ告げると忍はその場を後にした。
バスケ部監督・下條の影響でめっきり表情の硬くなってしまった忍は、最近何を考えているのか直也にも全く読めなくなっていた。
「昔はもっと可愛げがあったのにな。」
ポツリと独り言を呟いて、直也は苦笑混じりに溜息をついた。
放課後。
直也は言われた通りバスケ部の部室へと赴いた。
下條の言いつけを守って、休養日であるこの日は誰も部室に来ていなかった。
「人を呼びつけておいて俺の方が先か。」
愚痴るように一言こぼすと、部室に据えられたベンチへと腰を下ろす。
そこへ、ガチャリと扉の開く音が響いた。
入ってきたのは直也を呼びつけた張本人の忍であった。
忍は扉を閉めると同時に、手早く鍵もかけた。
直也はその行動に不可解そうに顔を歪めた。
「で、俺に何か用か?」
とりあえず後輩の不可解な行動は気にしない事として、直也は問いを投げた。
だが忍からの返答はなかった。
忍は無言のまま直也の前に立つ。
何がしたいのかと直也が眉根を寄せた時だった。
頬に手を添えられ、気づけば唇を塞がれていた。
男の後輩にキスをされている状況にも関わらず、直也の脳内はいたって冷静だった。
“欲求不満か?こいつは――”
だが冷静でいられたのもそこまでだった。
今度は肩を掴まれたかと思うと、そのまま座っていたベンチへと押し倒されていた。
さすがに拙いと思った直也は、自分に乗りかかって来る忍の体を押しやる。
「ちょっと待て。何の真似だこれは。」
この問いに対し、またも忍の返答はなかった。
直也はハァと溜息をつく。
そしてあくまで冷静を装いながら言った。
「ポジション的におかしくないか?普通に考えれば逆だろ。」
男同士という時点ですでに普通ではないのだが、直也は忍の自分に対する感情を分かっているだけにそこは否定しない。
忍はしばらく困惑した直也の表情を堪能した後、ようやく口を開いた。
「ボクはずっと直也さんを押し倒したいと思っていたので、間違ってません。」
さらりと放たれた言葉に、直也は反論の言葉も思いつかなかった。
微妙な表情をしていると、忍はもう一度直也に軽く口付けた後、彼の肩を押さえていた腕をのけて立ち上がった。
「今日はここまでにしておきます。でないと、部室に来る度発情しそうなので。」
直也は身を起こしながら思った。
“やっぱり俺は監督が嫌いだ。”
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可愛かった頃の忍を返せ、的な直也で終了。
一応『first name』のその後のつもりで書いたのですが、私的設定ではあれから1年以上は経ってるのにキス止まり…
まぁ、部活に一所懸命でしたという事で。
いや、キス止まりどころか、まだ忍→直な関係から発展してないような気も…
そこはまた続きを書いていけたらなぁと思ってます。
お読み下さりありがとうございました!