成田CP
□Envy
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対瑞穂戦のミーティングが終わり部屋に戻ると、自分のベッドへと腰を下ろしながら直也が口を開いた。
「さっき話してた瑞穂の9番の話だが…」
忍も腰を下ろしながら直也の声に耳を傾けていたが、
「高階トウヤだっけ?どんな奴だったんだ?」
少しばかり忍の顔が歪む。
どこか不機嫌そうな顔に直也は首を傾げる。
「どうした?」
しばしの間をおいて忍は言った。
「直也さんの口から他の男の名前聞くのって、腹が立つなと思いまして。」
「今更だろ?」
確かに名前の事だけを言えばそうなのだが、直也が自分から対戦相手の選手に興味を持った事は初めてだった。
だから腹が立ったのだ。
「トーヤなんかの名前が出るのは気に入らない。」
正直な忍の気持ちだった。
そこには認めざるを得ないトウヤの実力と、自分と違って一年もバスケから遠ざかっていたような奴、という嫉妬と侮蔑の念がこもっていた。
何となく忍の心情を察した直也はクスリと一つ笑うと、ポンと忍の頭に手を乗せた。
「俺は勝つ為にお前の意見が聞きたいだけであって、個人的興味はない。ただマッチアップするなら俺が最適だと判断しただけだ。」
年下扱いされてるなと少し苛立ちを覚えながらも、忍は直也の手を心地良く感じて振り払う事はしなかった。
それから一通り自分の知っているトウヤのプレイを直也にレクチャーしてから、忍は話題を切り替えた。
「直也さん。あまり迂闊にボクに触らない方がいいですよ?」
「どういう意味だ?」
訳が分からず問うと、忍は真顔で言った。
「襲いたくなるので。」
考えてみれば一つの部屋に二人きり、しかもベッドの上に座っている訳で、普通に考えれば恋人同士なら自然とそういう流れになってもおかしくはない。
直也はタラリと冷や汗を流す。
「冗談ですよ。大会が終わるまでは手出ししませんから安心して下さい。」
冗談に聞こえない冗談に、直也は大きな溜息をもらした。
「お前のキャラの変貌ぶりには、時々ついていけなくなる…」
ポツリと零れた言葉に忍が反応する。
ささやかなお返しとばかりに、
「本当は部屋割り、直也さんは児嶋さんと同室のはずだったんです。でも折角のチャンスなので改竄させてもらいました。」
と、直也を窮地に追い込むような事を言ってのけた。
とどのつまりは、あわよくば同室を利用して何かしようと企んでいると言いたい訳だ。
直也は全身に悪寒が走るのを感じた。
完全に表情を強張らせてしまった直也を見て、忍はフッと笑った。
「直也さんてからかうと本当に色んな顔見せてくれますね。」
からかわれていたのかと、さすがの直也も少し怒りを感じた。
が、それも束の間。
「さっきも言いましたけど、大会中は負担をかけるような事をする気はないので。ああでも、部屋割りを改竄したのは本当ですけどね。」
という言葉と共に押し倒されて、唇を塞がれる。
これもある意味負担だと叫びたかったが、止む事のない口付けにそれは叶わなかった。
回を重ねる事に上手くなっていく忍のキスに、時折思考が飛びそうになる。
さすがにこれ以上は、という所で直也は忍の体を押しのけた。
今はまだ自分の方が力があるというのが唯一の救いだ。
だがそれ故に直也が抵抗しない事が忍を調子付かせるのだが――
「今日はこれで我慢しておきますけど、大会終わったら他の男の名前を口にしたこと後悔させてあげますから覚悟しておいて下さい。」
ニコリと笑った忍の顔に、直也が恐怖を覚えたことは言うまでもない。
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ACTU26巻で直也が「今晩レクチャーヨロシクな 忍」と言ったのを見て、こいつら絶対同室だ!と勝手に思って書きなぐった一作。
脳内春色な作者が、別の事レクチャーしてればいいのに、と思ったのは言うまでもない(笑)
だってこの台詞イヤラシ過ぎだもん。だもん。だもん。
それでは、お付き合いありがとうございました!