天童寺CP

□沢登聖人の恐怖政治〜ROUNDU
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 コンコンと扉をノックする音を聞いて、彩は面倒くさそうに扉を開けた。

そこに立っていたのは龍之介であった。

「ノボリならいないぜ。」

一言告げて、彩は椅子に座って自分の腕に湿布を貼り始めた。

今日沢登にボールを思い切り投げつけられた所だ。

龍之介は部屋に入って扉を閉めると、

「そのノボリに言われてここへ来たんだ。」

と告げて彩の手から湿布を奪うと、痣になっている所に貼ってやる。

「今日だけ部屋を変わって欲しいんだと。」

それは好都合だと彩は内心ホッとした。

「ノボリに何かしたのか?今日は一段とご立腹だったみたいだけど。」

龍之介の問いに彩は、

「別に何もねぇよ。」

と答える。

「あえて内容は聞かないけどさ、ノボリの嫌がらせはまだ終わってないみたいだぜ?」

どういう意味かと問うように、彩は眉根にいつもより深く皺を刻んだ。

「俺をこの部屋に送り込んだって事がその証拠だ。」

「何だよそれ?」

部屋を変えるという事は、嫌がらせが終わったという意味ではないのか?

不可解な顔をする彩に対し、龍之介はクスリと笑みを浮かべた。

「この部屋に来る前にノボリに言われたんだ。『好きにしていい』ってな。」

「はぁ?」

不機嫌そうに顔を歪めた彩だったが、次の瞬間その表情は驚愕へと変わっていた。

龍之介の顔が目の前にあって、唇には違和感。

キスされているのだと悟ったと同時に、龍之介の体を突き飛ばす。

「何のつもりだ?!」

龍之介は呆れたような笑みを浮かべながら言った。

「ノーマルなお前は全く気付いてなかったみたいだけど、俺はお前に惚れてるんだよ。」

彩はゾクリと身を震わせた。

“ここはホモの巣窟かよ!?”

冗談じゃないと逃げ出そうとした彩の腕を龍之介は掴むと、そのまま勢い良く引っ張って床へと押し倒す。

抵抗出来ないように腕を押さえつけ、

「下手に暴れるとバスケに支障きたすぞ?」

と、言葉で脅した。

そう言われてしまうと、彩は龍之介を睨みつけるくらいの反抗しか出来なかった。

龍之介はフッと笑みを浮かべる。

「これ以上何かする気はないから安心しろよ。」

言いながら手を彩の上着の中に滑り込ませ、脇腹をスルリと撫でた。

“言ってる事とやってる事が違うじゃねぇか!”

くすぐったさにビクリと体を震わせる彩。

「ここもボール当たってたろ?」

余裕綽々に発せられた言葉に、そういえばと痛みを感じて思い出す。

龍之介は拘束していた腕を放して立ち上がると、机の上に置かれた湿布を取る。

彩は上体を起こすと、ムスっとした顔で黙ってその様子を見ていた。

そして上着を捲られて湿布を貼られるのを、抵抗する事無く受け入れる。

先程までとはうって変わって大人しい彩に、龍之介はつい笑みをこぼしてしまう。

“もう安心してるのか。甘いな。”

そう思うが、これ以上警戒心を抱かれるのも、沢登の思惑に乗るのも癪だったので、龍之介は湿布を貼り終えるとすぐに上着を元に戻して体を離した。

「打撲だけで済んで良かったな。」

龍之介がそう言うと、彩はプイと顔を背けた。

そういう所が可愛くて仕方ないと思う龍之介。

このまま部屋を交換してくれないものだろうかと考えるが、沢登がそこまで甘くない事は分かっている。

『部内恋愛禁止』

なんて約定を掲げているのだから。

そのくせ自分は他校の選手と熱愛中とは、独裁政治もいい所だと龍之介は呆れる。

“俺の彩に傷をつけたんだ。今度玉置を使って意趣返しでもしてやるか。”

そう密かに企む龍之介であった。





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綺麗所をかけてみました。
明和戦で龍之介が思った以上に男らしかったので、攻めだろう、とか考えてたんですけど、今回沢登の仕返し第二段で大抜擢!
龍彩って意外に萌える★
ちょっとどこまでマイナー突っ走るんだよって感じなんですけど、一人でも読んで下さった方が居たなら幸いです。
ありがとうございました!

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