天童寺CP

□死刑宣告
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 卒業式を間近に控え、三年生達は各々寮の自室の荷物をまとめ始めていた。

それは鎌倉元晴も同じで、だが整理という物が苦手な彼は少々荷造りに手を焼いて苛々していた。

そんな時、コンコンと扉をノックする音が聞こえて、鎌倉はチッと舌打ちしながらも渋々扉を開けた。

だがそこに立っていた人物を見て、鎌倉は何も見なかった事にして扉を閉めようとした。

が、その反応を予測していたのか、訪問者・本田裕太はそれを阻止する。

鎌倉は諦めて、

「何の用だ。」

と忌々しげに問いを投げた。

すると許可もしていないのに裕太は部屋へと入り込んでから口を開いた。

「いやぁ、鎌倉さんともここでもう会えなくなるんだなぁと思って。」

その言葉に鎌倉の苛々はリミットを振り切った。

「だから何だってんだ!用がねぇなら出てけ!」

怒鳴ってみるが、当然裕太は全く動じない。

それどころか我が物顔で勝手に椅子へと腰掛ける。

「てめぇ、実力行使で追い出されなきゃ分かんねぇのか?」

ドスの効いた声で言った鎌倉だったが、裕太には珍しく真剣な表情でじっと見つめられて、勢いを削がれてしまう。

「何だよ?」

穴が開きそうな程の痛い視線に耐えられず聞いてみると、裕太はようやくニッと表情を緩めた。

かと思うと、突然とんでもない事を口にした。

「一年待ってて下さい。俺も鎌倉さんと同じ大学行きますから。」

「はぁ?!」

そんなに自分の邪魔がしたいのかと鎌倉が怒りを覚えた時、裕太は付け加えるように話を続けた。

「俺、鎌倉さんと離れたくないっすから。好きな人の側に居たいっていうのは、人としては当然の感情な訳で。」

鎌倉は絶句した。

“今、何つった?好きとか言ったか?いやいや俺の耳がおかしくなったんだ。そうだ。そうに違いない。”

頭の中で自分にそう言い聞かせた鎌倉だったが、更なる爆弾発言が裕太の口から発せられた。

「これまで鎌倉さん押し倒したいの必死で我慢してたんすよ?聖人さんがせめて卒業するまで我慢しろって言うから大人しくしてましたけど、それももうすぐ解禁ですね。」

悪意の欠片も感じられない笑顔で告げられた言葉は、鎌倉の耳には悪魔の囁きに聞こえた。

“ノボリよ。今日ほどお前の人徳に感謝を覚えたことはねぇ。”

よくぞこのケダモノを抑えてくれたと感謝する。

しかし根本的な問題は何も解決していない。

卒業したらどうなる?!

鎌倉は、まさか男の自分が貞操の危機にさらされる日が来るとは思ってもみなかった。

それどころか、何故この世で一番憎たらしい後輩に好意を寄せられねばならぬのかと、己の不運を呪った。

鎌倉は知っている。

この本田裕太という男は、普段はボーっと抜けているが、やると言った事は必ず成し遂げる男だ。

「卒業式、楽しみにしてるっす。」

そんな不気味な捨て台詞を残して、裕太は部屋を出て行った。

鎌倉はこの日から毎日悪夢にうなされる事となったそうな。






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裕太×鎌倉、好きで好きで堪りません!
虎視眈々と鎌倉を狙っている裕太。
でもチームメイト一人一人に気を配っている為にそれに気づいてしまった沢登が、とりあえず天童寺にいる間は鎌倉の気持ちを配慮してストッパーになってると思う。
ただ卒業したらもう知らんと見捨てるのが沢登聖人の良い所(笑)
鎌倉の未来や如何に?!
という所で、ここまで読んで頂きありがとうございました!

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