天童寺CP

□じれったい
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 ボクに敵意剥き出しな所が可愛くて、気付いたら好きになってた。

余裕を取り戻した後の鎌倉さんはもっと可愛く思えて仕方なかった。







 インターハイが終わって三年生が事実上引退すると、裕太は張り合いが無くてつまらなくなっていた。

一応三年も部活に出ては来るのだが、練習は別々。

裕太としては鎌倉と同じコートでプレイするのが楽しみだった為にその楽しみを奪われて、相変わらず態度は飄々としていたものの、やる気の無さはコーチの怒りを買うほどになっていた。

お陰でいくらシュートを決められようとも、Bチームへと追いやられる結果となった。

それでもどうでも良いといった態度の裕太に、マネージャーの一人が三年生へと相談にやってきた。

話を聞いた沢登は、これを解決出来るのは鎌倉しかいないと思った。

しかし、鎌倉が素直に裕太の説得にあたってくれるとも思えなかった。

だが予想に反し、鎌倉は「しょうがねぇなぁ」と呟いて、裕太の部屋へと向かって行った。

他の三年生達は、

“鬼の霍乱か?!”

と、驚きを隠せなかった。



 鎌倉は裕太の部屋の前に立つと、一つ溜息をついてから扉をノックした。

返事はなかったのだが、扉の隙間から光がもれていたので中に居る事は分かった。

現在裕太は一人で部屋を独占していて、誰かいるとすれば裕太しかあり得ない。

そこで鎌倉は許可を得る事もなく扉を開いた。

ベッドに寝転がっていた裕太は鎌倉の姿を見ると、驚いて起き上がった。

「何で鎌倉さんがここに?」

驚愕に目を見開く裕太を余所に、鎌倉は部屋の扉を閉めると椅子に腰を下ろした。

「お前、最近気の抜けたプレイやってるらしいじゃねぇか。」

切り出された言葉に裕太は更に驚く。

まさか鎌倉が自分を気にかけてくれる日が来るなどと思った事がなかったからだ。

彼が気にするのは己のポジションを脅かす人間であって、自分個人に興味を持ってくれる事はないと思っていた。

鎌倉が好きだから、裕太としてはそれが悔しくてならなかったのだが、今この瞬間は間違いなく自分を見てくれていると思うと嬉しさが込み上げてきた。

「お前さぁ、俺からポジション奪っといて、俺が消えたら他の奴にポジション奪われるたぁ、どういう了見だよ?」

ジトリと睨まれて、裕太はしゅんと肩を竦めた。

「だって、鎌倉さんがいないと張り合い感じないんすよ。俺が超えたいと思ったのは鎌倉さんだけだし、だから鎌倉さんいなくなって、やる気湧かなくなっちゃって…」

しばらく黙って裕太の言い分を聞いていた鎌倉だったが、呆れた溜息をこぼすと口を開いた。

「手前勝手な事ぬかしてんじゃねぇよ。つーか、今のお前じゃこっちが張り合い出ねえ。大学行ったらてめぇをギャフンと言わせるようなシューターになってやろうと思ってたのによ。」

その言葉に裕太は、え、と驚いて鎌倉を見つめた。

口角を上げてニンマリと笑みを作った鎌倉に、裕太も笑顔を見せる。

「じゃあ、俺が大学生になったら、また鎌倉さんとやり合えるって事っすね。」

「そういう事だ。あ、ただし俺と同じ大学来るのはやめろよ?またお前とポジション争いなんざ、真っ平御免だ。」

「え〜、それって鎌倉さん負けを認めてるって事じゃないんすか?」

うっ、と口を噤んだ鎌倉に、裕太はニコニコと明るい笑顔を見せた。

鎌倉はかつてその笑顔が大嫌いだった。

自分が行き詰っている時に何度も見せられて、どれほど苛々したかしれない。

だが今は、この笑顔が出るなら大丈夫だろうと安心して、自分の仕事は終わりだと椅子から立ち上がる。

「とりあえず、明日からはAチームに復帰出来るよう真面目にやれよな。」

そう言って部屋を出ようとした鎌倉だったのだが、突然背後から裕太に抱きしめられて動きを止められた。

振り解こうとしたが敵わず、耳元でそっと囁かれた言葉に顔を真っ赤にさせる事になる。

「好きです、鎌倉さん。」

知っていた。

その想いをずっと分かっていたが、苛立ちを前に気付かぬふりをしてきた。

そして苛立ちを吹っ切った後、自分も同じ気持ちを抱いている事に気付いた。

だが今はまだ、裕太の気持ちも自分の気持ちも受け入れる事は出来ない。

だからこう言うしかなかった。

「一年後、同じ事が言えたら付き合ってやるよ。」

背後で裕太が笑ったのが分かった。

「一年後でも十年後でも気持ちは変わりませんから。」

その言葉が本当になるか嘘になるか、結末は二人だけの秘密。





**************
裕鎌万歳!
このカプは裕太の片想いなイメージだったりするのですが、両思いもオイシイ★
裕太は実は誰より鎌倉の活躍を望んでると思う。
裕太も鎌倉も大好きなので、インハイ決勝戦が非常に楽しみです!
今も三浦が3Pを狙いにいった時にアップになる二人にウハウハなんですけどね!
ではでは、読んで下さってありがとうございました!

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