瑞穂CP
□作用と反作用〜第2話『藤原の効果〜相寄り型』
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無視、無視、無視。
トウヤは榎本にキスされて以来、彼を徹底的に避けるようになっていた。
もちろん部活が同じなので仕方なく顔を合わせ、口を聞かなければならないのだが、それ以外ではとにかく関わらないよう気を配っていた。
榎本の方は何もなかったかのように平然としていたのだが、それがまたトウヤの勘に障る。
自分は人に流されるタイプではないし、むしろ己のペースに引き込む事が得意なはずであった。
だというのに、何故自分が振り回されねばならないのかと。
そんな或る日のこと、バスケ部に珍客が訪れた。
卒業して数ヶ月、今は大学生をやっている藤原と三浦であった。
二人は氷室から最近トウヤの様子がおかしいと相談されて様子を見に来たのだ。
特にトウヤと榎本の間が上手くいっていないようだという事で、この二人がチョイスされた。
藤原はトウヤ、三浦は榎本をそれぞれ呼び出し、各々別室で話を聞くことになった。
さて三浦と榎本の方であるが、
「作戦、上手くいってるみたいだね。」
と、三浦が楽しそうに切り出した。
榎本はふと笑みを浮かべて「お陰さまで」と返した。
実は榎本がトウヤにキスを仕掛けたのは、三浦の助言からであった。
ああいうタイプはまず口より体で分からせた方がいい、と。
「今のトウヤ、榎に意識過剰になってるみたいだから、そろそろもう一押ししてみれば?あまり長引くと部活に響くしね。」
「そうっすね。」
榎本が答えると、二人は目を合わせてニヤリと笑った。
一方、藤原とトウヤの方は重い空気が漂っていた。
何があったのかと聞いても答えないトウヤに、藤原は溜息をつくよりなかった。
出来れば自分の口から言って欲しかったのだが、トウヤが言い出さない以上もう藤原が切り出すよりなかった。
「榎本に告られたんだろ?」
図星をつかれて、トウヤは間の抜けた顔で藤原を見やる。
藤原は困った表情をしながら言った。
「榎本がお前に惚れてるって事は気付いてた。で、先生からお前と榎本がうまくいってないらしいと聞いて、何となく察しがついた。」
藤原が気付いていたという事は、三浦はおろか恐らく哀川辺りにも気付かれていたのだろうと思うと、トウヤは恥かしさのあまり顔を真っ赤にさせた。
「まあ何つうか、俺から言えることは一つだ。」
何を言われるのかと藤原と目を合わすと、
「諦めろ。」
返って来たのは助言でも何でもなく、突き放すような一言だった。
トウヤはガックリと項垂れる。
「お前、認めたくないだけで、もう十分榎本の事好きだろ。」
思わぬ言葉にピシリとトウヤは凍りつく。
「この際だからはっきり言うけどよ、さっき練習見てて思ったんだが、お前が榎本を見る時の目、どう見ても惚れてるようにしか見えなかったぜ?」
「んな訳ないじゃないすか!」
全力で否定したトウヤに対し、藤原は冷たい視線を返した。
「それならそれでお前らの問題だからどうでもいいけどよ、自分が瑞穂バスケ部背負ってるって事だけは忘れんなよ。」
一番大事な部分に釘を刺し、藤原は勝手にしろといった様子で立ち上がった。
そのまま部屋を出ると、そこに三浦が立っていた。
その表情から藤原は何かを察した。
「もしかして今回の一件、全部お前の手回しか?」
「さあね。」
クスリと笑った三浦に、藤原は頭を抱えた。
「とりあえず、後は本人達に任せようよ。」
三浦がそう言うと榎本が顔をのぞかせた。
そして藤原に一礼すると、トウヤの待つ部屋へと入っていった。
榎本が扉を開くと、そこに落ち込んだように俯いたトウヤの姿があった。
「トーヤさん。」
声をかけると、ゆっくりとその瞳が榎本へと向けられる。
向けられた瞳にドキリと心臓が高鳴った。
憂いを帯びた瞳はまるで、自分を待っていたと語っているように見えた。
榎本は何も言わずトウヤへと近づき、顎に手を添えて上を向かせると唇を合わせた。
抵抗はなかった。
トウヤは黙って目を閉じ、与えられるキスを受け入れる。
唇が離れて行くのを感じてトウヤが目を開くと、榎本はその目を見つめながら言った。
「好きです、トーヤさん。俺と付き合って下さい。」
きちんと告げていなかった言葉を改めて口にすると、トウヤはフッと笑みを見せた。
「いいよ。っていうかさ、何で初めから普通にそういう告白をしてくれないかな。」
「普通に告白しても、はぐらかされて終わりそうだったんで。」
榎本の答えに、確かにその通りかもしれないとトウヤは思う。
受け入れられずに流して、そのまま何もなかった事にしてしまっただろう。
結局こういう普通じゃない方法が自分にはベストなのだ。
相手が年下というのは癪だけれど、好きになってしまったものは仕方ないと諦める事にした。
その後、トウヤは別の意味で榎本に困らされる事になるのだが、それはまた別の話。
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「藤原の効果」とは何か?は、ネットで調べて下さい。
さて、何かとっても連載の予感な榎トーですが、忍直の次くらいに好きなカプになりつつあります。
榎本に振り回されるトウヤを書くのが楽しくて仕方ないんです!
トウヤって受属性だと思う…
Mっぽいというか(笑)
でも今の所トウヤ受は榎本相手だけという事で、出来ればまた書きたいなと思います!
このようなゲテモノを読んで下さってありがとうございました!