瑞穂CP
□作用と反作用〜第5話『トマト記念日』
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「今日の夜から明日の朝まで、俺にトーヤさんの時間くれないっすか?」
休み時間に榎本から問われた一言に、トウヤはその言葉の裏を察した。
「いいけど。」
何となく恥かしくなって顔を赤らめながらそう返した。
その夜、トウヤは榎本に連れられて都内のホテルにやって来た。
「え、まさかここに泊まるとか?」
有名な高級ホテル。
ありえないといった表情で尋ねたトウヤに、
「そうっす。」
と、榎本はあっさり答えを返した。
チェックインを済ませて通された部屋は、何とスイートルームであった。
トウヤは圧倒されて口をあんぐりと開けた。
「うちの叔父さんがここの支配人で、空きが出たって言うから取ってもらったんすよ。」
「もしかしなくても、榎っちの家ってお金持ち?」
あまりにストレートな質問に呆れながら、「まあそれなりに」と榎本は返した。
するとトウヤは目を輝かせながらガラスに張り付くようにして夜景を見渡すと、感動の声を上げてはしゃぎ始めた。
榎本は子供っぽいその行動に苦笑を浮かべながら、しばらくその様子を見つめていた。
やがてひとしきり部屋を見終えたトウヤは、今まで使ったこともないような高級ソファに腰を下ろして満足気な笑顔を見せた。
「こんなとこ、普通に暮らしてたら一生縁がなかったってー!榎っちに感謝〜!」
その言葉に榎本はフッと笑う。
「トーヤさんてこういうの好きだと思ったし、初めては記憶に残るような演出しといた方がいいかなと。」
初めて、という単語に、そうだったと思い出してトウヤは顔を赤らめた。
「一々そういう反応されると逆にやり難くなるんすけど…」
榎本はソファの肘掛に肘を立てて頭を抱える。
トウヤが照れれば照れるほど、意識しないようにしていたのに嫌でも考えてしまう。
どうしたものかと考えていた榎本の困惑を察したのか、トウヤはスクっと勢い良く立ち上がると言った。
「ね、お風呂とか入って来てもいい?」
「お好きにどうぞ。」
榎本の返答を受けて、トウヤは風呂へと直行した。
これが初めてでなければ一緒に入ろうなどと言えたのだろうが、さすがにそんな度胸はなかった。
しかし一人で入るには勿体無い程の広いバスタブ。
“後で一緒に入ろうって言えばいいんだ!”
などと考えて、トウヤは余計な事を思ってしまった自分を後悔した。
ずっと榎本に抱かれたいと考えてきたトウヤ。
ちょっとした事で期待が高まらないはずもなく、体を洗うだけで早々に風呂から出る事になった。
「随分早かったっすね?」
榎本の問いにトウヤは目を逸らす。
「榎っちも入る?よね?俺、寝室行ってるから…」
その様子から、急かされているとさすがの榎本も気付いた。
「トーヤさんがこのままでいいって言うなら、俺もそっち行きますけど?」
トウヤは口では何も答えず、ただ榎本の腕を掴んだ。
“拙い…”
榎本は直感的にそう思った。
自分の欲望を抑止出来ないから避けて来たのに、こうもあからさまに誘われると、理性など無意味なものになってしまう。
結局トウヤに誘われるまま、榎本はベッドルームへと向かった。
バスローブに身を包んでいたトウヤだったが、自ら進んでそれを脱ぎ捨てる。
もう榎本に理性など残されていなかった。
そのままベッドにトウヤを押し倒して、胸元にかぶり付くように唇を滑らせる。
何とか抑えて愛撫を施そうとしていた榎本だったが、トウヤはその前に中心を硬くしていた。
もうどうにでもしてくれといった体を晒すトウヤに、榎本は我慢出来ずに用意していたローションを手に取ると、前戯も何もなしに後の蕾へと指を差し入れた。
二本指が入るようになった所で、榎本はふと我に返った。
己の昂りは膨らむばかりなのに、このままでは無茶をしてしまうと、ここへ来て躊躇いを抱いてしまう。
止められた指の動きに我慢出来なくなったのはトウヤの方だった。
今まで下になっていたトウヤだったが、体勢を変えて榎本に跨る格好になる。
そして反り起った榎本の中心を手に取ると、自らそれを己の後孔に押し当て、そのまま身を沈めようとする。
「まだ早い――」
制止しようとした榎本を無視して、トウヤはゆっくりと腰を下ろしていく。
苦痛に歪むトウヤの顔。
無理矢理ねじ込まれようとする榎本の方も苦痛を感じたが、恐らくトウヤの比ではない。
それでも止めようとしないトウヤに、榎本は覚悟を決めてトウヤの腰に手を添えると、ゆっくりと腰を下ろせるよう体重を支えてやる。
「う…んっ!」
痛みに必死で耐えるトウヤの表情は、榎本を煽情する。
「ゆっくり息吐いて下さい。」
榎本は助言をしながら完全にトウヤが己自身を飲み込むまで身動きさえ止めた。
やがてトウヤの締め付けに苦しさを感じながらも完全に自身が入ったのを確認して、榎本は余程痛かったのだろう、トウヤの頬を伝う涙を拭った。
「い、たい…」
零れた言葉に
「当然じゃないっすか。無茶しないで下さいよ。」
と、榎本は少し怒ったように言った。
「だって榎っちが途中でやめようとするから…」
その言葉に素直に喜んでいいのか諭すべきなのか、榎本は苦笑を浮かべた。
「全く、トーヤさんには敵わないっすよ。初めてキスした時はあんなに狼狽してたくせに。」
皮肉な言葉に返事も出来ない程、トウヤは苦痛と戦っていた。
見てみれば後ろからは少し血が滲んでいた。
結局一度抜いた後、また解し直して今度はちゃんとセックスをした。
トウヤの気迫に覚悟を決めた榎本は、彼の体を気遣いながら事を進めた。
そうして二人の『初めて』は幕を閉じた。
翌々日、トウヤの机にコンとジュースの缶が置かれた。
見ればトマトジュースであった。
持って来たのはもちろん榎本。
「何これ?」
すると榎本は口元でニッと笑って言った。
「流血記念っす。」
言われて昨年のインハイを思い出したトウヤ。
だがこれは嫌味でしかないと思った。
「椅子に座ってるのも辛い俺への嫌がらせ?」
「まさか。ていうか、それって半分トウヤさんのせいなんすから、自業自得じゃないっすか。」
ムッと榎本を睨むトウヤに対し、榎本は耳元で囁いた。
「次は気持ちよくしてあげますから。」
この言葉で顔を真っ赤に染めたトウヤに、榎本はフッと笑って教室を去って行った。
“もう二度とやらせるもんか!!”
そんな決意がいつまで続くやら、結局鍵を握るのは榎本になるとは、この時のトウヤは思ってもみなかった。
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ごめんなさい、すみません、恥かしい////
もう笑っといて下さい。
これはですね、23巻を見た時からずっと書きたかったネタなのですよ。
流血記念のトマトジュース!!
この為に苦手なエロまで頑張って!!!ああもう、まじで恥かしい…
まあ、書いた時は半分頭寝てる状態で書いたのでどうでもよかったんですけど、一応と思ってチェックしてたら、恥かしすぎるってー!!
そんなお馬鹿な一品を、読んで下さった方はありがとうございました!
そして妙なものをお見せしてすみませんでした!