瑞穂CP

□運命の悪戯
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 自分を本当の意味で分かってくれる人間と出会える確率なんて、よくて0.1%くらいのものじゃないかとトウヤは思う。

人は誰かに依存しなければ生きていけないし、実際支えられて生きている。

でもそれは『理解』という言葉とは違う気がしていた。

誰にも他人の気持ちなんて読めやしないし、本当の自分は心の奥底に隠して生きている。

もしも本当の自分を見つけてくれる相手がいたとしたら、トウヤは間違いなくその人物に惹かれるだろうと確信していた。



 確信していた運命の相手――

それは何も異性だとは限らない。

盲点だった。



トウヤは今、哀川のアパートに居た。

インハイが終わってからよく誘われたり誘ったりで、哀川の元を訪れる事が多くなっていた。

そして何より、トウヤにとって哀川和彦という人間といる事が一番心地良かった。

何故なら彼は自分と同じ人種だったからだ。

大事な所は隠して、でも行動は己に素直で。

ただ哀川に対する感情は、恋とか愛とかそんなものではないと思っていた。

思っていたのだが…

「あのお、哀川さん?これは一体…」

いつものように哀川の部屋で他愛もない話をしていただけのはずだった。

それが、何の流れかトウヤはベッドの上で哀川に押し倒されていた。

先程の疑問の言葉は尤もであった。

しかし哀川は半分笑顔で、半分真剣な目で、どこか企みを含んだ笑みでこちらを見下ろしていた。

「これはどういう意図かって聞きたいの?」

哀川の問いにトウヤはコクコクと首を縦に振った。

すると哀川の笑みが完全にからかうような嫌味なものへと変わった。

「トーヤがあんまりにも鈍いからさ、ちょっと分からせてあげようと思って。」

「な、何をっすか?」

焦るトウヤ。

「そうだな、簡単に言えば俺の下心ってやつ?」

ニヤリと口元だけで笑みを浮かべる哀川。

「いやいや、俺男なんですけど?」

「知ってるよ。」

「豊満な胸も曲線美もない、逞しい男の子っすよ?!」

「だから?」

それがどうしたといった口調の哀川に、トウヤは困惑するばかりだった。

「ほら、そういう顔とか可愛いし、俺、男とか女とか気にしないし。」

サラリと放たれた言葉は、トウヤを呆れさせるには十分だった。

「哀川さんて、意外に節操なしだったんすね。」

苦し紛れにそう言ってみると、

「トーヤだからいいって俺は思ってるんだけど?」

と返されて、もう反論の余地もなかった。

「ああぁ、もうお好きにして下さい!と言えれば楽なんすけど、俺の気持ちは無視ですか?」

「十分尊重してるって。だってトーヤは俺の事好きでしょ?」

こういうのを唯我独尊というのではなかろうかと心の中で思うトウヤ。

「確かに好きですけど、それはこういうのとは…」

「まあ物は試しっていうし、一回やってみるのも面白いんじゃない?ていうか、トーヤって流されるタイプだって自分で言ってたでしょ?」

それが言葉のアヤだという事を分かっていながら引っ張り出してくる辺り、哀川は意地が悪い。

トウヤは拒否権がない事を悟ると、黙って哀川を見上げた。

すると遠慮なしにキスをされて、服を脱がしにかかられる。

シャツの釦を全て外された所で、哀川の唇が首筋へと移動する。

舌を這わされてくすぐったさに身を捩ると、哀川はクスリと笑った。

「意外と敏感体質?」

そういう事は言わないで欲しいとトウヤは顔を歪めた。

「何も言わずにちゃっちゃとやってくれた方がありがたいんですけど…」

「えー、でもトーヤって言葉攻めとか好きでしょ?」

何故そうなるとツッコミたかったが、これ以上藪をつついて蛇を出すのは不本意だったので止めておく。

そうしてまた大人しくしていると、トウヤの上半身を哀川の指が滑っていく。

わざと触れるか触れないかの微妙な触られ方をして、またしてもトウヤは身を捩る事になる。

くすぐったさを堪えて顔を歪めるトウヤを楽しそうに見下ろしながら哀川は言った。

「こんな素直にやらせてくれるなら、エロ本の差し入れより初めからこっちの方がよかったんだけど。」

さすがにそこにはツッコミを入れようとしたトウヤだったが、今度は下半身に手を滑らされてそれは叶わなかった。

まるで慣れているかのような手つきでズボンと下着を脱がされる。

「慣れすぎじゃないっすか?」

羞恥心を誤魔化すように問うと、

「初めてだけど?」

という返事と共に、一番敏感な部分に刺激を与えられる。

「あ…っ!」

思わず声を出してしまったトウヤにフッと笑ってみせる哀川。

「抵抗しない上に結構ノリノリだね、トーヤ。」

まるで期待しているかのように硬さを増す自身に、トウヤは恥かしさを堪えきれずに手で顔を覆った。

哀川はその手をベッドへと押さえつけて目を合わせる。

「次はどうして欲しい?」

ニンマリと笑みに歪んだ口元を見てトウヤは思う。

“ほんとに言葉攻めでやる気だ…”

「もうギブアップですー!いちいち聞くのとか無しの方向でお願いします…」

色んな意味で泣き出したいトウヤだったが、とりあえずこれだけはと懇願した。

すると哀川は苦笑する。

「分かった。じゃあ俺の好きなようにやらせてもらうから。」

それはそれで怖い気がすると思いながらも、幾分ましかとも思うトウヤ。

ただ、抵抗もなく受け入れている自分への戸惑いが大きく、これから先の事など全く考えていなかった。

施される愛撫に素直に反応を見せながら、トウヤの頭の中は徐々にぼんやりとしてくる。

思考を完全にシャットアウトしてしまう寸前、哀川がベッドの下から取り出したものを見て、ギョッと目を見開いた。

それを確認しながらも、哀川は無視して事を進めていく。

先程取り出したのはローションの瓶で、そこからヌメリとした液体を指に垂らすと、トウヤの足を持ち上げて後孔へとその指を滑り込ませた。

違和感にトウヤの顔が歪む。

「今更嫌だとか言わせないから。」

先読みしたような言葉を強い目で言われて、トウヤは何も言えなくなる。

指を増やされて丁寧に解された場所に、やがて哀川のものが押し当てられる。

「痛かったら言って?なんて、止める自信はないけどね。」

つまりどう転んだ所で結果は同じだと言われている訳で、トウヤは覚悟を決めてギュッと目を閉じた。

しかし痛みは思っていた程ではなく、挿入される感覚にかき消されていく。

トウヤがゆっくりと目を開けると、優しい顔をした哀川が視界に映った。

“この人、こういう顔もするんだ。”

それはまるで愛しいものを見る時のような表情で、もしかすると自分は物凄く愛されているのかもしれないとトウヤに思わせた。

そう思ったら、先ほどまで違和感しか感じなかった哀川との繋がりの部分が、急に心地良く感じられた。

トウヤは先を促すように、哀川の背にしがみ付くように手を回す。

「やっぱりトーヤ、可愛いね。」

軽口を叩きながら、哀川はゆっくりと律動を始める。

気持ち良くなんてないはずなのに、感情が肉体を凌駕して、その動きに感じてしまう。

「ん…っあ、あぁっ…」

トウヤは必死で声を我慢しようとするが、勝手に口をついて出てくる。

哀川は満足そうな顔で、苦痛にも見えるトウヤの快楽に溺れていく様を堪能する。

このままでは思ったより早く達してしまいそうで、お返しとばかりにトウヤの中心を扱いてやる。

「も、無理…」

そんな言葉がトウヤの口から洩れた所で、哀川は一層激しく攻め立てる。

限界まで絶頂を我慢させた後、哀川はトウヤの中に己の精を吐き出すと同時に、トウヤにも最後の刺激を与えて果てさせてやった。

乱れた息を整えながらトウヤはボーっとした頭で言った。

「うぅ、明日絶対下痢になるぅ。」

ムードも何もない言葉に苦笑する哀川。

ゴムを付けてやらなかった事を後悔しながら、

「ごめん。ちゃんと処理してあげるから。」

と返した。

 処理と証して風呂に直行したものの、また湧き上がって来た衝動に駆られてもう1ラウンドいたしてしまった二人。

風呂から上がった後、トウヤはベッドの上でぐったりと身動きもとれない状態になっていた。

そんなトウヤの頬にキスを落としながら哀川は言った。

「トーヤといると自分が抑えられなくなるんだよね。今までよく我慢したって褒めて欲しいくらいだよ。」

「褒めてほしいのはこっちの方っす。初めてづくめなのに二回も…」

哀川はハハと、乾いた笑いを返す。

「俺の欲望を煽るのはトーヤだけだから。出来ればこれからも付き合って欲しいんだけどな。」

どれくらいの頻度で付き合わされるのだろうかと考えると、運命の相手というのは意外に残酷なものだと思い知らされたトウヤだった。





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半分踊らされ、半分興味本位で書いた哀トーでした。
こんなエロ丸出しなの書いたのは久しぶりで、非常に恥かしいです///
こちらは哀トーが見てみたいと仰った雪野さんに捧げたいと思います。
こんなんで良ければ貰って頂ければと…
ほんと、やまなしいみなしおちなし、という『やおい』を素でいっちゃってる作品になってしまって、色んな意味でお恥かしい限りです…
こんなのを読んで下さった方がいらっしゃいましたら、本当にありがとうございました!

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