瑞穂CP

□待ち焦がれた幻想
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 もしもこの世で一つだけ欲しいものが手に入るなら、ボクは迷わずこう答えるだろう。

『藤が欲しい』



 かつては間違いなく独占出来ていた。

けれど高校に入り、仲間が増え、二人の時間は削られる一方だった。

究極の駄目押しは哀川の登場だった。

嫌いにはなれない人物で、彼がいなければ藤原が自分を取り戻す事もなかっただろう。

けれど少なからず嫉妬心は煽られた。

二人の間には、自分達とは別の見えない絆がある。

ただ単純な嫉妬心を向けるのは間違っていると解っていた。

藤原にとって、バスケというものを通して必要なのは哀川であって自分ではない事は自覚していた。

だからもっと別の感情を自分に向けて欲しいと願っていた。







 一方の藤原は、何となくだが三浦の考えている事を察していた。

しかしインターハイが終わるまでは昔のように深く関わる事は出来ないと考えていた。

そしてそれを三浦は理解してくれていると、自信過剰と思われるかもしれないが確信していた。

誰よりも己を理解してくれる事を解っていた。

甘えすぎだと言われるかもしれないが、今は三浦の嫌に物分りの良い所に甘えずにはいられなかった。

自分が三浦に向ける感情は、一度暴走すれば止められないのだから――











 そしてインターハイが終わり、二人の間に存在した柵は取り除かれた。

もう何も遠慮する事はない。

そこで藤原は三浦を自分の家へと招いた。

自分の部屋に入った所で、藤原は口を開いた。

言うべき言葉は一つだけ。

「三浦。」

名前を呼ぶ声につられて藤原の顔を見る三浦。

「好きだ。」

その短い一片の言葉に、全ての想いが込められていた。

どれ程の気持ちがそこに詰められているのか、三浦には感じ取れた。

自分が藤原に向けるものと同じ想い。

同じだけの重さを持った想いを一言から感じ取って、三浦は泣き出したいような衝動に駆られた。

心のどこかで諦めていた、叶う事のない願いだと思っていた現実が、今ここにある。

言い知れぬ喜びに高鳴る鼓動を感じながら、三浦は気付けば藤原の胸に飛び込んでいた。

藤原は己に抱きついてくる三浦のその背を、離れるのを拒むように強く抱きしめる。

その時――



 『やっと手に入れた』



そんな二人の心の声が重なった。







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めちゃくちゃ短くなってしまった;;
しかし、この二人は多くを語る必要はないんじゃないかと思います。
何も言わなくてもお互いの心が読めるくらいの絆があると思うので!
ただ恋愛面では不安を抱えてるといいなと思ってこういう形にしました。
一つ言い訳があるとすれば前半の三浦の思考…話の都合上仕方ないという事でf^^;
こちらは「いらない」と言われそうですがLunaさんに勝手にプレゼントさせて頂きます!

今日は「いい夫婦の日」という事で、アップするのに一番夫婦らしい藤蘭をチョイス(笑)
という訳で、読んで頂きありがとうございました!

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