他校同士CP

□交わる事のない恋
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 ずっと狙っていた先輩に振られ、気を紛らわす為に忍は東京へと足を運んでいた。

しかしいざ来てみて後悔した。

雑踏の中にいると自分の孤独さが浮き彫りになって、余計に虚しくなった。

そんな時、人混みの中に見知った顔を見つけた。

「トーヤ?」

向こうも一人だったので名を呼んでみると、トウヤはこちらに気づいて笑顔を見せた。

「忍じゃん!こんなとこで何してんの?」

「お互い様だろ。」

「確かにそうなんだけどね。」

苦笑を浮かべるトウヤを見て、忍は何となく都合のいい相手を見つけたと思った。

気を紛らわせるには打って付けの相手だ。

「トーヤ今一人?」

「そうだけど?」

確認すると、忍は気付かれない程度に口元を歪ませた。

「昼飯奢るからさ、ちょっとボクに付き合ってくれない?」

何気ない誘いの言葉にトウヤは同意する。

“人の裏をかくの好きな癖に、こういう時鈍いよな。”

心の中でそう思いながら、忍は近くのファミレスへとトウヤを連れて行った。

そこで好きな物を食べさせた後、トウヤの腕を引っ張って人気の少ない路地へと入って行く。

周りを見渡してトウヤは焦った。

「ちょっ、何でラブホ街なんて通るわけ?!」

「ボクに付き合うって約束だろ?」

表情一つ変えずに告げられた言葉に、ようやくトウヤは危機感を覚えた。

「まさか、入るとか言わない、よね?」

「まさか。」

言いながら忍は数あるホテルの中の一つに足を踏み入れようとする。

トウヤはそんな忍を引っ張って拒否を見せた。

「拙いって!俺たち一応高校生なんだから。」

「向こうも客商売なんだ。そんな事いちいち気にしないよ。」

「いや、それに俺たち男同士!」

その言葉に忍から冷たい視線が向けられた。

トウヤは思わずギクリと身を凍らせた。

「さっき報酬は払ったんだ、今度はボクの番。」

そう言うと、忍は無理矢理トウヤを引っ張ってホテルへと入った。

ここは店員と顔を合わせなくて済む所だという事は、彼女持ちの同級生たちからリサーチ済みだ。

さっさと空いている部屋に入ると、入り口の近くに設けられた電話で『ご休憩』を告げ、シューターのカプセルに料金を入れてそれを送り出すと、チェックインは終了。

今にも逃げ出しそうなトウヤの腕は掴んだまま、ベッドへと直行する。

忍は投げ出すようにトウヤの腕を引いてベッドへと放り出すと、逃げられないようそのまま馬乗りになる。

「ちょっと待ったあ!俺って2千円程度の価値なの?!っていうか無理!掘られるとかあり得ないから!」

騒ぎ立てるトウヤに忍は苛立つ。

「五月蝿い。」

睨みつけながらそう言って、忍はトウヤの服を脱がしにかかる。

忍の機嫌が相当悪いことはよく分かった。

故にトウヤはそれ以上文句を口にする事が出来なかった。



 結局有無を言わさず食われてしまったトウヤ。

しかもやる事を終えると、自分で脱がしておきながら忍はさっさと服を着ろと命令する始末。

思ったほどに痛い思いはさせられなかったが、何の言葉もなく、キスの一つもされず、ただ掘られただけという、トウヤは最悪な情事に泣きたくなった。

そもそも男にやられたという所から問題なのだが、不思議とそこに怒りはなく、ただ虚しさだけがトウヤを支配した。

何故虚しく感じるのか、その理由は分かっていた。

自分がただ憂さ晴らしに使われたのだと感じていたからだ。

誰の代わりにされたのかは知らないし、別に忍を恋愛対象として好きだという思いも一切なかったのだが、さすがにキスをされなかった事は何故か心に傷をつけた。

好きな相手と以外する気はないのだと宣言されているようで――



 翌日、憂さ晴らしを果たした忍とは対照的に、トウヤは頭を抱えていた。

抱かれた感触が消えない。

気を抜けば頭の中に昨日の忍の冷たい顔が浮かぶ。

自分の事など全く眼中にない忍。

それなのに、酷いことをされたはずなのに、忍が気になって仕方なかった。

何があったのか、何故あんな事をしたのか、問わずにはいられなかった。

 週末、トウヤは千葉にいた。

会えるかどうかも分からないのに、忍に会う為に。

決着をつけておかないと部活に集中出来ないと思ったのだ。

そして成田中央の近くに来た所で、トウヤはある人物と遭遇した。

「玉置さん?」

直也は驚いてトウヤを見やった。

「お前、何でこんな所に?」

「や、ちょっと忍に用があって…」

言いよどむトウヤに、これは何かあったなと察する直也。

「さっき練習終わった所だから、連れて来てやるよ。ここで待ってろ。」

言われた通りその場に留まるトウヤ。

待ちながらふと思い出した。

“そういえば忍、何か玉置さんの事好きって感じだったよなぁ。てことは、俺って玉置さんの代役?”

そう考えて、あの人の代役などどう考えても不可能だと自嘲した。

あれほど整った顔をしていない事は自覚している。

代役でないのなら一体何なのか?

“もしかして失恋?”

それなら合点がいく。

自棄になっていたのだと。

そう考えていた所で、忍が姿を現した。

「何しに来たわけ?」

相変わらず冷たい顔だった。

「まあいいや。折角千葉まで来たんだし、うち寄って行きなよ。」

さすがにトウヤももうその言葉の裏は理解出来た。

それでも大人しく忍に従った。

ただ道中、トウヤは一つ墓穴を掘った。

「忍さ、もしかして玉置さんに振られて荒れてたの?」

当然忍は何も答えなかった。

そして家に着くなり押し倒されて、また抱かれる事になった。

それも初めての時と違って酷く、痛みに意識を飛ばしそうになった程だった。

またキスをされる事もなく、顔を見ることさえ許されず、ただ後ろから欲求をぶつけられただけだった。

最後は追い出されるように家を出て、痛みを堪えて体を引きずるように神奈川まで帰ることになった。

図星を言い当ててしまった事が拙かった。

けれどこれではっきりした。

忍の行動の意味が。

そして自分が忍の事をどう思っているのかが。

決して叶う事のない願いを抱いてしまった事に、トウヤは人知れず涙を零していた。





*************
痛いよー。
忍酷すぎだよー。
痛すぎるって事で、一応続きを用意してたりします。
が、とりあえず今回はこれで終わりという事で。
お付き合いいただきありがとうございました!

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