明和CP
□その二人にはご用心
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麻上は非常に困っていた。
悩みの種は後輩である結城希である。
実は三年生になって間もない頃から希と付き合っていたりする。
同学年の長瀬に懐いていたのでてっきり彼を好きなのかと思っていたら、去年の秋頃に突然告白をされた。
初めは相手にするつもりはなかったのだが、何度も好きだ好きだと言われるうちに、自分も特別な感情を抱いてしまった。
まあそんな事は今となってはどうでもいい。
問題なのは――
「長瀬さんのパスがあれば絶対勝てます!」
と、大会への意気込みを名指しで長瀬へと嬉々とした表情で告げたかと思うと、その視線は麻上へと向けられる。
“何でそこで俺を見る…”
長瀬へ向けた言葉なのだからそのまま長瀬だけを見ていればいいものを、すぐに視線を自分へとスライドさせる希に辟易していた。
口では「長瀬」「長瀬」と言いながら、必ず視線は長瀬を経由して麻上に向けられるのだ。
はっきり言って何を考えているのか分からない。
希の意図が全く掴めない麻上は、その謎の行動に非常に迷惑していた。
嫉妬でもして欲しいのかと考えない事もなかったが、むしろ長瀬に嫉妬しているのは希の方だという事を麻上は知っている。
クラスも寮の部屋も同じものだから、嫌でもほぼ24時間一緒に居ることになる。
一度それに対して希から不満を言われた事があった。
「長瀬さんばっかり麻上さん独占してズルイ…」
膨れっ面でそんな事をポツリとこぼした希が可愛く思えたのを覚えている。
しかし、そんな事を言う割に部活中は長瀬にベッタリだ。
入部した時からそんな調子だから、麻上としては今更嫉妬するも何もない。
ある日、長瀬がいない時を見計らったように自分の部屋へやって来た希に麻上は疑問をぶつけた。
「なぁ。お前、悟と話してる時によく俺の方見てくるよな?何でだ?」
突然の問いに希は少し驚いたような顔を見せた。
「何だ、気付いてたんですか。」
「あんなにあからさまに見られて気付かない訳ないだろう。」
眉根を寄せてそう答えると、希はふと笑った。
「麻上さんが俺の事ばかり見てるから、俺もお返ししないとと思いまして。」
「は?」
何だその理屈はと、麻上は顔を歪めた。
「だって、俺の事見てなかったら、そんな事気付かなかったでしょ?」
言われてみれば確かにその通りだ。
「なんて、ほんとは昔からずっと同じように麻上さんに視線送ってたんですけど、ようやく俺の方見てくれるようになったんだって、今の言葉で実感しましたよ。」
やられた、と麻上は思う。
見事に希の思惑に嵌ってしまった訳で、自分が希を好きだという事を思い知らされる結果となった。
「ちなみにもう一つ付け加えさせてもらうと、俺が長瀬さんにベッタリなのは、長瀬さんを麻上さんから遠ざける為なので。まぁ、長瀬さんの事は先輩として尊敬してますし好きですけど。」
そう言ってニコリと笑った希を見て、麻上は頭を抱えた。
“生意気だ生意気だとは思っていたが、ここまで偏屈だったとは…”
などと考えていると、希の顔が直前に迫っていた。
慌てて離れようとしたが、それが逆にバランスを崩す事となって、麻上は希に床の上に押し倒される形になっていた。
そこへ――
ガチャリと扉が開いて長瀬が戻って来た。
長瀬は特に驚いた様子もなく、
「お邪魔そうだから時間潰してくるよ。」
と言い残して去って行く。
「ちょ、待て!悟!」
助けを求めるように叫んだが、その声は長瀬に届く事はなかった。
希に視線を戻すと、ニコニコと爽やかな笑顔がそこにあった。
「長瀬さんは俺の協力者なので。」
驚きに目を見開く麻上。
「どうやったら麻上さんをオトせるか相談したら、『麻上は押しに弱いから、しつこく告白し続けてればオちると思うぞ』って助言くれたの長瀬さんですから。」
長瀬の性格を完全に見誤っていたと痛感する麻上。
絶対いつかやり返してやると思う麻上であったが、この後彼が長瀬を出し抜ける日が来ることはなかった。
そして希から逃れられる日も――
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長瀬は実は黒かった説浮上。
初めは長瀬を絡めるつもりなかったのですが、何か急に頭の中でダーク長瀬が浮かんで来てこんなオチに…
長瀬と希で麻上を共有とかいうのもイイな〜なんて考えた私は相当腐ってます。
でも麻上って受に回ると掌の上で遊ばれてそうなイメージなんで(笑)
麻上受オイシイ★
それでは、ここまで読んで下さりありがとうございました!