明和CP

□嫉妬するのは勝手だが
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 「お前が俺に意見したのって、初めてだよな?」

突然切り出された言葉に麻上は顔を歪めた。

不機嫌を顔に貼り付けて、視線を合わせようともしない長瀬。

どうやら昼間の部活での一件に腹を立てているらしい。

だが正論しか言っていない麻上としては、文句を言われる筋合いはない。

「誰も口出ししなかった事も、希の為なら言わずにはいられなかったか?」

背けられていた視線を向けられて放たれた言葉は、麻上にとって思いもよらぬものであった。

「希の為にと口煩いのはお前の方だろう。」

これもまた正論。

だが今日の長瀬はどこか様子が違った。

相変わらず不機嫌なまま、こちらを睨むように見てくる。

一体何なのだと麻上は苛立ちを覚えた。

そこへ、扉をノックする音と共に、こちらの返答を待たずして希が部屋へと入って来た。

険悪な雰囲気の長瀬と麻上を見て、希は心の中でニヤリと笑った。

「何かあったんですか?」

わざとらしく聞いてみると、

「何もねぇよ。」

と、麻上が不機嫌な声で答えた。

「希、悪いが今俺たちは大事な話をしている最中なんだ。出て行ってくれないか?」

長瀬はやんわりと、けれどこちらも不機嫌そうな声でそう告げた。

これに対して希はあっさりとこう返した。

「嫌です。」

反抗的な希に、いつもは甘い長瀬も苛立たずにはいられなかった。

「出て行けと言ってるだろ。」

威圧的にそう言われた希だったが、そんな長瀬を無視して麻上へと視線を向けた。

「俺は麻上さんに用があって来たので、麻上さんの意見に従います。」

言われて麻上は拍子抜けしたような表情を見せた後、こいつには敵わないとばかりに苦笑すると、

「何の用だ?」

と聞いてやる。

「今日は俺の為に怒ってくれてありがとうございました。俺、焦ってばかりで周りが見えてなくて…でも麻上さんのお陰で目が覚めました。」

麻上は殊勝な言葉を発した希に笑みを浮かべると、その頭をよしよしと撫でてやる。

だがその手は長瀬によってパシリと払われた。

その行動に腹を立てたのは希だった。

「何のつもりですか?」

押し殺した声で問う希。

それをギッと睨みつける長瀬。

麻上は戸惑った顔で二人の様子をうかがっていた。

他のバスケ部員が今の希と長瀬の姿を見たなら、驚愕のあまり声を失う所だ。

バスケをやっている時は本当に仲が良く見えるのだから当然だ。

しかし一旦バスケから離れると、途端にぶつかり合うのを知っているのは麻上くらいのものだ。

理由は分かってはいないが、希が自分と長瀬の部屋に来るといつも牽制し合っているのが空気で分かる。

一体互いに何を苛立ち合っているのか、麻上は次に各々が言った一言でそれを理解した。

「龍一は俺のものだ。」

「いえ、俺のものです。」

ちょっと待て、と麻上は心の中でつっこむ。

自分は誰のものにもなったつもりはない。

何と自分勝手な奴らだと思いつつも、麻上はしばらく黙っている事に決めた。

「龍一は俺と付き合ってるんだ。お前にそんな事を言う権利はない。」

「例えお二人が付き合ってたとしても、俺にだって奪う権利はあるはずです。」

「奪えると思ってるのか?」

「いつか愛想尽かされる日がくるかもとか考えた事ないんですか?」

だんだん呆れが込み上げてくる麻上。

「一言いいか?」

たまらず口を挟むと、二人はバッと麻上の方を振り向いた。

「もう既にお前ら二人に愛想尽きてるんだが、まだ言い合い続ける気か?」

その言葉に、希と長瀬の顔に焦りが見えた。

「悪かった龍一。もう止めるから!」

「もう余計な事言いませんから!」

「「だから見捨てないでくれ(下さい)!」」

アホらしい…

麻上はこんな牽制のやり合いの為に今まで重い空気を体感させられていたのかと思うと、呆れ果てて物も言えなかった。

本気で長瀬との別れを考えさせられた一日であった。





***************
な、何かギャグになってしまった…
シリアスに長麻を書こうとしていたのに、気付いたらただの間抜け話になってました(汗)
でも希と長瀬の仲が悪い明和とか、考えると恐ろしいですよね。
どっちも意固地な感じなので、麻上の取り合いとか始まったら永遠に和解なんて出来ないと思います。
機会があれば次はちゃんとした長麻を書きたいと思います。
読んで下さってありがとうございました!

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