狐の嫁入り


「雨か…?」
空を仰ぎ見ると蒼が広がっていた
晴天

「ありゃりゃ、こりゃお狐さんの嫁入りだね」
「嫁入り…狐殿?」
そう、嫁入りですよ
緑の戦忍が呟く

「蒼空なのに雨降ってることをそう言うんですよ。雨雲がないでしょ?」

言われてみると確かにない
雲一つないのだ

「では何故雨が降っておるのだ?」
「質問ばっかだねぇ。」
「何故降っておるのだ?

「さぁ?俺さまも分からないや。ごめんね旦那」
「そうか、佐助にも分からないことがあるのだな」

そうだよ
俺さまにも分からないことはいっぱいあるよ
分かることは一つしかない

「俺さまが分かることなんて一つしかないよ」
「何を言う。佐助は色々なことを教えてくれるではないか。物知りであろう」
「ふふ、ありがとう旦那」
そっか、俺さまって物知りなんだ
なんだか嬉しくなる

「じゃあ旦那にいいこと教えてあげますよ」
「何だ?」
「耳貸して下さい」

ひそひそ

鼓膜を揺らす微かな音

「そんなもの、疾うに知っておるわ」
「あれ?知ってましたか」
えへへ、と笑う戦忍はどうも幼く見える


側には一匹の狐が立っていた

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