コール音が響く暗い部屋
8回目、やっと繋がると留守電で
「某は現在不在でござる故、発信音のあとに伝言をどうぞ」
機械音痴な彼が、自分と一緒に設定した音声が流れた
「もしもし旦那?おれだよ、佐助だよ。これ新しい番号だから、登録よろしくね?」
って、旦那は登録の仕方分からないよね
と苦笑った
「今日ね、旦那の御葬式やったんだ。人、沢山集まってくれたよ、流石は旦那だね」
電話の向こうからは何も聞こえない
「おれさま、こう見えて御葬式とか初めてだったからさ…作法とか分からなくって、超大変だったんだからね」
声の震えが抑えられなかった
「伊達ちゃんなんかも泣いちゃっててさ…ほんと皆きったねぇの。泣き方がね」
お陰でおれさまが泣くタイミング逃しちゃったくらい
「ねぇ、旦那…だからさ、おれさま今泣いてもいいかな」
昔、あんたがおれに言ったんだよ
『お主は何故そうやって隠すのだ?弱くない者など居らぬ。泣いたってよいのだぞ、佐助』
「旦那…っ、なんで置いていっちゃったのさ、」
高ぶる感情を鎮めるための生理現象が
頬を伝う
「流石に…辛いよ、」
嗚咽混じりに弱音を吐いた
「旦那がいないなんてさ、可笑しいよね…」
今きっと、自分は酷い顔をしている
なんて少し冷たい頭が思案する
「おれさま、どうしたらいいのさ」
(嗚呼、運命を呪ってしまえたら)