【wacky%変わった人】




「秋は綺麗だな、まるで佐助の髪のようだ」

縁側に座る主はもう若くはない
紅蓮の鬼なんて持て囃されていたころの面影は
その臙脂色の羽織りくらいだろうか

紅葉の枝を止まり木にしている忍びの髪は、
昔と変わらず艶やかに靡いている


「幸村さま、寒さが御身に堪えますよ。中にはいりましょ」

「そうだな、」

そう呟いて、立ち上がろうとする彼の手は
少し震えていた

主はもう、長くはない


「ねぇ、幸村さま」
柔らかく朱い唇が言葉を紡ぐ

「なんだ、佐助」

「昔みたいにさ、旦那って呼んでいいかな」

「好きにしろ」
優しく笑う彼の顔には幾つもの皺が刻まれていて

「おれさまが不気味じゃないの?」
言いながら地面に飛び降りた

「何故そう思うのだ、分かりきって居るだろうに」

「それもそうだね」

「お主は寂しくないのか」

「そんなこと聞くの、旦那くらいだよ」
笑う忍びの肌は白く、陶器のようだ

「いつも独りだったのだな」

「もう慣れたけどね」

「俺は佐助を独りにさせるつもりはないぞ」

「ほんとに旦那はいつも無茶ばっかりだね」

「本当だぞ」

「勘弁してよ?心中ってかい」
言葉に似合わない幸せそうな顔が主の眸に映り込む

「俺は最期までお主を独りにはさせぬよ」


遠くで烏が鳴いた

カァカァカァ




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