「もとなりぃー」
甘い声を出しながら男の腰に後ろから腕を回した
男はパソコンに向かい仕事をしていた

「鬱陶しいわ、離れよ長宗我部」
「ひでぇ!少しくらいいいじゃねぇか」
「暑苦しいわ」
「お前だって夜はしつこいくらい触ってくるだろっ」
「我が貴様に触るのは
我の勝手であろう。しかし貴様が我に触れるのは気に食わん」

理不尽なことを言いながらも止めようとはしない辺り
俺も随分愛されてるなあと思う

「だってアンタ、やらしいことする以外構ってくれねぇじゃねぇか」
頬を膨らませ拗ねた素振りをする

「構ってほしいのか」
振り返りもしなかった男はやっと目線をこちらへ向けると
僅か、目を細めた

どくん
心音が煩い

本当に顔だけは美形なんだよな
つい騙されそうになる

「…そりゃ、忙しいってのはわかるけど…構ってほしくないわけじゃない」
「回りくどい言い方をするな」
「…構ってほしいです」

語尾の方は聞こえないんじゃないかって思うくらい気弱な音を紡ぐ
刹那、鼻で笑われた

「なっ…!なんで笑うんだよ!」
「いや、別に」
また笑われた

「もういい!アンタに構ってほしいと思った俺がバカでした!仕事と寝てろ!」
「構ってやらぬとは言っておらぬぞ。人の話は最後まで聞け」
「え……?」
「どうやって構ってほしいか言ってみろ」
「ど、どうって…いや、特にはねぇんだけど…」
「…貴様、構え構えと言うわりには何も考えておらなかったのか」
呆れたわ、とまた画面に目線を移した。

「……じゃあ、頭撫でて欲しいです…」
小さく呟いて、ぎゅっと腰に回した腕に力を入れると

ふ、と笑いながら
片手が俺の頭に伸びる
犬を撫でるように天パ気味な髪をわしゃわしゃとされた
キーボードを打つ音は相変わらずだった


気が付くと
俺はなんだか、こそばゆい気持ちになっていた

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