主文

□高橋くんと清水くん
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「絶対こっちの方が楽だって」
「何言ってんの、絶対こっちだよ」

五月蝿いな、昼寝してたのに。何の言い争いだ。

「だって俺、無理。絵とか描けない。」
「俺の方が歌うの、駄目なんだよ。美術だったら絵を書くだけじゃないだろ。」
「清水、俺がどれだけ美術的センスが無いか知ってるのか。」
「知らないね。」
「幼児並か、それ以下だ。」

その通りだが、自分で言うか。

「自分で言うか。それに俺だって凄く音痴なんだよ。」
「どれくらい?」
「ジャ〇アンくらい。」
「嘘だろ。」
「嘘じゃない。」
「だからカラオケに行きたがらなかったのか。」
「カラオケなんて断固拒否だね。」
「今度引き摺ってでも連れていくからな。」

この前の俺のようにか。

「柱に掴まってでも行かないね。」
「そこまで壊滅的だと聞くと逆に聴きたくなる。そうだよな、小太郎。」

俺にふるな。

「小太郎にふってもしょうがないだろ。」
「いや、小太郎は応えてくれる。」

いや、応えないし。という態度をとって昼寝するふりをする。

「ほら。」
「マジか。」
「完全に無視されたな。」
「俺、小太郎にフラれたのか。」
「そうだよ、認めろよ。」
「考えたくない。」
「考えろ。」

というか最初の言い争いはどうした。

「俺、小太郎がいなきゃ生きていけない。」
「言ってろ。」
「酷い。清水、冷たい。」
「お前がうざいからだろ。」
「えー。」
「ちょっ、抱きつくな。抱きつくなら小太郎にしろ。」

やめてくれ。

「ああ、そうだな。一応清水より小さいしな。」
「一応ってなんだよ。高橋、ケンカ売ってるのか。背が低いって馬鹿にしてるのか。」

そうだ、俺よりは大きいぞ。一応。

「馬鹿にしてる訳じゃないって。只、可愛いサイズだな、と思って。」
「やっぱり馬鹿にしてる。」
「してないって。なぁ小太郎。」

いきなり抱き上げられた。くそ。

「だから小太郎にふるなよ。」

其れより、お前ら一番最初の問題は良いのか。という気持ちを込めて、









「ワン」

と鳴いた。



END

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