苺とチョコときみ

□苺 01
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「遅刻するーッ!!!!」


ベットから跳ね起きてまず叫ぶ。
役立たずの目覚まし時計を睨んで悪態をつき、叫びながら制服に着替える。

―遅刻15分前―

つまりは着替えて、朝ご飯食べて、支度している間に私は遅刻するわけだ。

少しでも短縮しようといつもは結ぶ髪を下ろしたままにし、
冷蔵庫にあった苺のパックをまるまる掴んで玄関へ向かう。

……と、


「鞄忘れたぁー!!!!」


せっかく靴を履いたのに一度脱ぎ、取りに戻る。
即効で苺を持っている手とは反対の手で鞄の取っ手を掴む。
走って玄関に戻り、靴を履き、ドアを開け、鍵を閉めてさぁ、走ろう。


「やばいやばいやばいやばいやばい」


呪文のように唱えながら通学路を走る。
そして思うのはこんなとき空間移動系の能力があったらどんなに楽だろうということ。

一応、莉和も能力者なのだが発火能力(パイロキネシス)なため
こんなときは何の役にも立たない。
というか普段から何の役にも立たない。

漫画とかだとヒロインはパンをくわえていて
曲がり角で誰かとぶつかり、運命の出会いーなんて
お約束の展開が待ってるんだけど
私の場合パンじゃなく苺だし、しかもくわえてないし。


っていうか苺持ってきたけど、
食べるタイミングがなーい!!!!



かつてこんなに速く走れただろうかというような速さで走り、
やっとのことで学校に着く。

昇降口に向かい、教室までの道のりを早足で歩く。

既に他の教室からは「起立」などの声が聞こえてきて余計に焦り早足になる。
いや、もはや小走りになっている。

やっと教室が見えてきたと思ったら向かいから見えるあのピンクの頭は
担任の小萌先生ではないですか!!!


(嘘っ!!!)


これじゃあ同時か一歩遅れて教室に到着する羽目になる。
走ると怒られるとかそんなことを考えている余裕はない。

滑り込みセーフを狙い、全力疾走する。

私に気づいた小萌先生が「廊下は走っちゃだめなのですよー」と
注意していたが、もう動き出したらとまらない。

それをわかった小萌先生は自分に突撃してきそうな勢いの私を止めるのではなく避けるという行動に出た。

もちろんそのまま真っ直ぐ走っていくつもりはない。
教室に入るつもりだった……のに


「小萌先生? 入らないんですか?」


教室の前で身を避け、固まっている小萌先生を不思議に思ったのだろう。
ツンツン頭の少年が扉の前に現れる。

そんな風に突然出てこられたら止まれる訳がない。

向こうが私に気づくのと、私が急停止をかけようとしたのは同時だった。


「うがッ!?」

「みぎゃ!!」


止まる事が出来ず、そのままツンツン頭こと上条当麻とぶつかり床に倒れこむ。


「いっ痛ーッ!! ……不幸だぁああ」

「ごめーん!!
だって急に出てくるから……」

「お前、それ謝ったことになってねぇぞ」

「あ! 苺無事だったー」

「……無視ですか?」




不幸少年苺少女




(苺いかが?)

(なんでだよ!?)

(二人とも、廊下で騒いではだめなのですー)
 

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