Primula

□06
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四方から撃ち込まれる高速のジャブ。それをミットで受けながら一歩うしろへと下がる。
だが、その少しの距離も無意味とでもいうように容赦ない猛ラッシュ。

リズムにのってきたのか一層機敏なフットワークで攻撃が繰り出される。


いつの間にか試合のような撃ち合いに変わり、これ以上はマズイと口を出す。


「待て了平。…軽くミット撃ちだと言っていなかったか?」


なおも続く攻撃。顔面に放たれたストレートを寸でのところでかわす。


「どうした幸哉!油断するな!」


案の定ひとの話など耳に入れることをしない幼馴染みに私のこめかみに血管が少し浮き出たように思える。
ストレートを放って動きが一瞬止まり隙のできた了平にノーモーションで蹴りを繰り出した。


「おまえの方こそ油断するんじゃない」


「ぐはぁっ!!」


横へふっ飛んだ了平は手加減した分ダメージはあまりなく、直ぐに回復して憤慨していた。


「何をする?!」


「こっちの台詞だ、バカ野郎。なに本気で撃ち込んできてるんだ…軽くって言ったろう?」


「む、それはすまん!だが極限に気持ちが高ぶったのだ!」


確かにこうやって二人でトレーニングするのは久しぶりで私自信も高揚していた。


「わかったが、あまり飛ばすな私の体力も考えろ」


了平と撃ち合えるくらいまでは腕を上げたが、体力的には女である私の方が不利だ。

しかも、しばらくお互いに個々で鍛練していたために気づかなかったが、了平もまた腕をあげている。

私はキックボクシング以外にもしているというのに…


しかし、少しは私に気をつかってもらいたいものだな。一応女だぞ。
普通に顔面もボディも容赦ないパワーで打ってくるから時々心配してしまう。私だからいいものの、他の女の子相手には気をつかってほしいものだ。


まぁ、闘いに女も男も関係なんてない。手加減されても困るし、私の防御も良くなっているのであまり口煩くは言えない。


「悪かったが、もう少しつきあってくれ」


「ん、別に構わないが普通に打ち合わないか?お互いのスタイルで…な」


「うむ幸哉が良いのなら…極限勝負だな!」



私がグローブを着け終えリングにあがると、二人同時に構える。それを見ていた一人の部員がタイミングよくゴングを鳴らせた。



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