story

□【君へ】(バレンタイン闇表)
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君のためにチョコを作ったんだよ

去年、君は僕が初めて作った形の崩れたチョコをとても嬉しそうに食べてくれたから

君は凄く喜んでくれたけど
キレイな君の指と摘んだ不格好なチョコがあんまりにも不釣り合いで

ちょっと落ち込んじゃった

もっと綺麗で美味しい市販のにすればよかったと少し後悔した

でも君は
『相棒が俺の為に作ってくれたチョコに勝る物はないぜ』

そう言って甘いキスをくれたよね

ちょっと照れくさかったけど

君のほんとに嬉しそうな笑顔を見てると

とても嬉しくて幸せで…
あの時は君が居なくなるなんて考えてもいなかった

そんな事を思い出しながら
誰もいない、月明かりだけがさめざめと差し込む部屋で
机の上の綺麗にラッピングされた
誰にも送られることのなかった小さな箱のリボンをとく

「頑張って作ったんだけどな」
蓋を開けると去年よりは成長した
でも、ヤッパリちょっと不格好なチョコ

部屋を甘い香りが包む

一つ摘んで口に入れた

口いっぱい広がる甘い味

君のあの笑顔を思い出して涙が零れた

「大好きだよ、もう一人の僕…。」

誰にも届くことのない声は
ただ夜の闇に溶けていった
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