季節は夏。
外に出ると白い息…
*雪が降ってきた*
「ゔー…さみぃ」
だだっ広くて無機質な駐車場には、雪がちらついている。
歩く度に揺れる二つくくりにした黒髪。時折雪が触れては消えていく…。
マフラーとコートに身を包んだ0小隊隊員の一人…優香は少し、嫌そうに顔をしかめて空を仰いだ。
「昨日まで暑かったなんて、なんだか信じられないネ」
彼女の相方、飛風が白い息を吐きながら、辺り一帯を見回たす。
「…どーでもイイけど、怪しいよ…あんた」
呟いた優香に、飛風は「そーかなぁ…」と小さくぼやいた。
長いマフラーを鼻の頭まで巻いて、眼鏡だけが覗いている。…その上にふあふあの耳あてまでつけてきょとん、としてる相方。確かに一見見ると怪しい。
優香は、はぁっとため息をついた。
その息も、冷たい空気に真っ白になる。
「…それにしても……車が遠い」
彼等が言うところの車とは、正式名称は「エアジェット」と呼ばれる浮遊式の乗用機の事だ。
てくてく歩いても歩いても…車しか見えない駐車場は、果てのない世界に感じられる。
「歩いてたらあったかくなるんじゃない?」
飛風が呑気な事を言ってるうちに、どうやら優香は小隊専用の車を発見した様だった。
指紋読み取りキーに触れて、中をがつっと開ける。
「…うゔっ…さむっ!飛風ちょぃ待ってて。エンジンかけてあっためるから」
「ん」
ぶるっと震えて、飛風は腕をさすった。
「……なんだかまた寒くなってきた気がする」