──星の為に……
彼は命をも、
惜しまず……──
*英雄かく戦えり*
「だぁから!!行かないって言ってんだろ。ここにいて死ぬって言うんだったら喜んで死んでやるよ!!」
少年が、一人の少女に噛み付かんばかりに吠えている。
まさに険悪そのもの。
しかし彼女は、へでもない顔で少年を見据えていた。
「バカね。死ぬのは別に構わないけど…迷惑だって言ってんのよ。せっかく遠い星から軍人さんが助けにきてくれたのに……。そうだ…──ティア、あんたワクチンはちゃんと打ったの?」
「うるせーな!!とっとと帰れ!!ペチャパイッ」
バンッ
少女の目の前で、勢い激しくドアは閉じられた。
「…ガキ」
少女はそれを睨みながら呟いた。
そうして…ため息をついて辺りを見渡す。
少し傾いている玄関を支える柱。
その周辺の庭には伸び放題の雑草。
すぐ鼻につくオイルの臭い。
隣のガレージ(今はシャッターが降ろされているが…)の前にはどこから拾ってきたのかガラクタばかり。
何も…変わっちゃいない。
あの頃と同じ様に、また、もうすぐ夏がくる。
しかし…自分達はそれを待たずにこの星を離れなければならない…。
思い出は、一陣の風によって、少女の黄金色の髪を撫でながら…静かに過ぎていった…−