暗いデータ倉庫に、こもった音でMB(メディアボックスの通称略)が鳴っている。
デスクに突っ伏してまどろんでいた松笆は、がばっと重たい頭を持ち上げた。その拍子に、近くに山積みにしていたディスク達がガラガラと崩れていく。
徹夜明けなのか、包帯代わりに巻いている青い布も少々よれており、その隙間からは火傷で覆われた皮膚が覗いていた。色素の薄れたグレイの髪もぼさぼさだ。
ディスクに埋もれていたMBの通話ボタンをようやっと押す。
…しばらくして、松笆の頓狂な声が倉庫に響き渡った。
「はっ?!いやいや!三日中になんて無理に決まってんだろーがっ…!!」
*誰が為の船*
「よしきた!一日中、樹書倉庫に篭る決意はできている!」
「なぁ〜にが決意だ。居座りたいだけだろう」
棚の隙間から光が伸び、埃を映し出している。
松笆から連絡を受けてやってきた優香はルンルンだった。
ガッツポーズをとり、黒髪のツインテールを揺らしてにやにやしている。
「倉庫ん中はオレが全部!昨日のうちに引っ掻き回したの!それでなかったからお前に頼んでるんだよ」
「えー……一抜け〜」
樹書倉庫に入れないと分かるや否や、優香はくるり、と方向転換をした。
「お〜い、コラァ!待たんかい!」
松笆は苦笑いをして、慌てて止めた。
こういう事を頼めるのは、なんでも屋の0小隊しかいないのだ。行かれては、困る。