番外
□年末につきましては。
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窓の外は、静かな雪景色…
相反する様に…バタバタと忙しい軍部…−
**年末につきましては。**
昨日から降り出した雪は、変わる事なくしんしんと降り続いている。
優香はドライバを握る手を止めて、窓の外を眺めた。
「あ〜…さみぃな、チクショー」
目の前には、壊れた空調ダクト。
そろそろ直りそうな感じなのだが、手がかじかんで思う様に進まない。
少し離れた所からは、飛風の弱った声が聞こえてきた。
「優香〜…どう?直りそう?」
「んあ〜…そっちは?」
「なんとか直ったよぉ〜…」
「こう寒くちゃ、動く手も動かねぇよ…」
「ホントだよね…。少し休憩する?」
エアステップラダー(エア式の収縮可能な脚立)の上で優香はぶるっと身を震わせた。
「いや…後…ちょっとなんだけど……」
彼女が再びダクト修復に取り掛かろうとした時…ドアが開いた。聞き覚えのある毒づいた声…。
「うをっ、さむっ!!なんだよなんだよ…ちっとも直ってねぇじゃねぇーか0小隊さんよぅ」
樫が刑事班一課のデスクに戻って来たのだ。雪がはらはら付着しているロングコートの下には、珍しくスーツなぞを着ている。
優香は一瞬宙を睨んだが、すぐにダクトをいじり出した。
「おい、こら!聞こえてんのか?クーソーガーキー!」
無視しよう。
心の中で決め込むと、黙々と作業を続ける。
「ごめんなさい、樫さん。もうちょっとなんで…」
一課には寒いのを嫌がってか、年末にかけての犯罪防止強化の為か…刑事と呼ばれる人間は誰一人としていない。樫が戻ってきたぐらいだ。