番外

□お姉様な日々
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「あーあー…素敵な出会い…なぁいかなぁ」

「……まーた始まった…」









**お姉様な日々**











「あんたさぁ、こないだ言ってた刑事はどうしたわけよ?」
「へ?」
 くるくる巻いた栗色の髪が肩で揺れる。ぱっちりの目。しっかりカールしたマツゲ。ぷっくりした唇は小顔によく映えている。
 可愛い。
 確かに雪歌-ユキカ-は可愛い…と、晃-アキラ-は思う。
 このテラスにいる女性達の中で一際目立っているし、側を通り過ぎる男達も自然と目がいっているようだ。
 だが、彼女には未だに「恋人」と呼ばれる人種は傍らに存在しない。
「けい…じ?えと…木蓮さん、の事?」
「…あー…うん、それ」
 ぽやん、とした喋り方の雪歌に少々イライラしつつも晃は彼女の言葉を待った。
「木蓮さん、は…こないだ波那-ナミナーちゃんがね…−」

−も、さいってー!!女の子が傍にいるのに完無視よ、完無視!!…優しいって聞いてたけど…絶対嘘ね!!気遣いってもんが感じられなかったものっ。…雪歌…あんたもあの人の事いいなって言ってたけどさ…。悪い事は言わないからやめときなさいっっっ!!

「…てぇ、言ってたから…」
「……〜」
 晃は短い前髪をかき上げてため息を吐いた。…ズキズキ頭痛がしてきそうだ。
「晃ちゃん?」
「あーのさぁ、それって波那が会っての印象でしょぉ?あいつ結構強引だし…。あんたが会ったら違うかもよ?!」
「え?え?」
 突然まくし立てられて、雪歌はぽかん、としている。…明らかに、意味を理解していない顔。
 晃は盛大なため息をつくと、つまり…と説明を始めた。雪歌とはそれなりに長い付き合いだ。あーゆー反応をすると分かっていつつも、やはりイライラしてしまう。
「つーまーりーだーねー、波那とあんたは違うって事!振り回されるなってーの」
「…で…でも…」
 ようやく意味を理解したのか、雪歌はおずおずと晃を上目使いで見つめた。
「でもね…晃ちゃん、私と波那ちゃんて結構、好み…似てるしぃ…」
 ブチ切れる寸前で思い止まる。晃は雪歌を一瞥すると観念して呟いた。

「ま…好きにすれば?」





***





 すらり、と背の高い雪歌は何処を歩いていても目立つ。
 幼い頃ダンスバレーをやっていた事もあって、歩き方も姿勢が良く、とてもキレイだ。何故モデルにならずに軍の広報課にきたのか…彼女を見た誰もがそう思うだろう。軍服も似合ってはいるが…やはり今流行りのキラキラした服の方が似合っている。
 しかし…やはり内面は顔に出ると言うか…ぽわわんとした表情が声をかけやすそうに思われるのだろう。ナンパな男共が彼女に声をかけてくる事も度々だ。
 この日も雪歌は科軍第一施設から、広報課のある本部に戻る途中だった。
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