拍手SS集

□1月SS
2ページ/4ページ




「だぁかーら〜!!! とにかくあの蒼桐大佐はかっこよかったんだから!」
「あ〜……はぃはぃ」

 広報課。のどかな朝。私は不覚にも万年恋女の波那-ナミナーにとっ捕まってしまっていた。










【恋慕情】










「で? 何があったわけよ?」
「それがね、それがねっ!! 急に広報課に来たと思ったら『変わりはないだろうか?』よっ! 大佐様がよっ!!」
「うんうん……それで?──」
「ほらぁ、前に物騒な事件があったじゃなぁい!」

 あー……。
 思い出したくもない……。
 私が下手に人質になってしまった「将軍を出せ事件」──
 今じゃ、広報課の伝説となりつつある。
 あの時、助けに来てくれたのが蒼桐大佐直属の部隊──0小隊だった。

「私さ、大佐とかの位の人間は止めておこうと思ってたんだけど……ちょっと、これはやばい!」
 何がやばいんだか……──
「繋がりが欲しぃ〜! ねぇ、晃ぁ!」
「無理でしょ?」
「無理じゃないわよ! だって……──」
 波那の目線の先。
 苦情の電話応対に朗らかに応えている、0小隊の飛風さん。
 人質になった時に助けてくれたのは、別の人だったけど……苦情応対にはほぼ毎日顔を出してくれるのは、飛風さんの方だ。

 オレンジがかった金髪に、眼鏡の奥にはキレイなスカイブルーの瞳。
 中性体(男でも女でもない性)の人のほとんどは美人が多い。
 飛風さんは、その中でも一際目立ってる様に、感じた。

 声をかけると、いつも優しそうに笑う。
 私ははからずも、彼の笑顔に少しばかり……ドキドキしていた。

「なんとかコネつけてもらえないかしらっ?!」
「飛風さんにぃ?」
 うんうん頷く波那にため息。
 アホらしい……。
「0小隊が直属とはいえ、大佐様と繋がりを作ってくれるようには見えないけど?」
「分かんないじゃん!……ねぇ、晃ぁ」
「なんだよ……」
「昼休み、飛風さん誘ってくんない?」
 私はがっくりとうなだれた。
 ホント、自分からは行かないんだから、こいつは。
 万年恋多き女には、ほとほと疲れる。
 私の想いの方が、まだまだ可愛い方だ。
 自嘲。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ