「だぁかーら〜!!! とにかくあの蒼桐大佐はかっこよかったんだから!」
「あ〜……はぃはぃ」
広報課。のどかな朝。私は不覚にも万年恋女の波那-ナミナーにとっ捕まってしまっていた。
【恋慕情】
「で? 何があったわけよ?」
「それがね、それがねっ!! 急に広報課に来たと思ったら『変わりはないだろうか?』よっ! 大佐様がよっ!!」
「うんうん……それで?──」
「ほらぁ、前に物騒な事件があったじゃなぁい!」
あー……。
思い出したくもない……。
私が下手に人質になってしまった「将軍を出せ事件」──
今じゃ、広報課の伝説となりつつある。
あの時、助けに来てくれたのが蒼桐大佐直属の部隊──0小隊だった。
「私さ、大佐とかの位の人間は止めておこうと思ってたんだけど……ちょっと、これはやばい!」
何がやばいんだか……──
「繋がりが欲しぃ〜! ねぇ、晃ぁ!」
「無理でしょ?」
「無理じゃないわよ! だって……──」
波那の目線の先。
苦情の電話応対に朗らかに応えている、0小隊の飛風さん。
人質になった時に助けてくれたのは、別の人だったけど……苦情応対にはほぼ毎日顔を出してくれるのは、飛風さんの方だ。
オレンジがかった金髪に、眼鏡の奥にはキレイなスカイブルーの瞳。
中性体(男でも女でもない性)の人のほとんどは美人が多い。
飛風さんは、その中でも一際目立ってる様に、感じた。
声をかけると、いつも優しそうに笑う。
私ははからずも、彼の笑顔に少しばかり……ドキドキしていた。
「なんとかコネつけてもらえないかしらっ?!」
「飛風さんにぃ?」
うんうん頷く波那にため息。
アホらしい……。
「0小隊が直属とはいえ、大佐様と繋がりを作ってくれるようには見えないけど?」
「分かんないじゃん!……ねぇ、晃ぁ」
「なんだよ……」
「昼休み、飛風さん誘ってくんない?」
私はがっくりとうなだれた。
ホント、自分からは行かないんだから、こいつは。
万年恋多き女には、ほとほと疲れる。
私の想いの方が、まだまだ可愛い方だ。
自嘲。